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ウッディ・アレンが人嫌いになった理由を感じる日々 [映画業界物語]

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 ハリウッド俳優のウッディ・アレンはインタビュー嫌いで有名だ。というより「人嫌い」と言われている。パーティや記者会見にも出席しない。人前に現れることがまずない。ニューヨーク生まれのニューヨーク育ち。多くの人に愛されるアクターであり映画監督。なのになぜ、人嫌い?と思っていたのだが、「もしかしたら、こういうことかな...」と思えること。この数年、続いている。

 撮影や宣伝でお世話になった地方の方々の多くは、その後もお付き合いが続き、その街では撮影しない僕の新作も応援、支援してくれる。本当に感激。なので、別の仕事であっても、その人たちの街を通るときには、途中下車してお訪ねし、ご挨拶したり近況報告したりする。

 東京に戻るときにお世話になったA市で途中下車。地元の方に新作映画の進展報告等をすることがある。が、お世話になったB市が近所にある。A市に寄ったことを知ると「監督。B市にも寄ってくださいよ。寂しいなあ〜」と言われる。でも、両方の街に寄る時間はなく、考えた末に短時間で何人も訪ねることができるA市を申し訳なく思いながら選んだのだ。

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 また、お世話になったC市の方をお訪ねしたときはこう言われた。「ここまで来たのなら、少し先のD市まで行った方がいい。皆、喜んでくれるよ」確かにその通りだ。が、C市でさえかなり無理して来ている。D市まで行くと、その日の内に東京に戻れない。残念だが行けないと伝えると「でも、あの街でもお世話になったんでしょう? 感謝の気持ちが足りないじゃない〜」と注意される。

 無理してお訪ねしても、結果、そんなふうになることがある。また、訪ねた街でも、こう言われる。「***さんを訪ねたそうですね? 何でうちには来てくれなかったんです?」こういうこともある。「**さんに先に挨拶に行きましたよね。何でうちはあとなんです? 私の方が撮影の応援したはずですけどね」

 訪ねるときも、いろいろ考える。誰から順に訪ねるか? そして自宅だといきなり行くのは失礼。なので、お店をやっている方。会社を経営している方で、急に訪ねても、対応してもらえ、迷惑がかからない方を選んでお訪ねすることもある。それでも「うちへは来てもらえなかった...」「なんで**さんが先なんだ?」と言われる。「何でA市だけ」「だったらC市も!」と不満を持つ人が出てくる。

 ただ、ある街ではお訪ねすると、誰かが「監督が来てるよー」といろんな人に連絡をしてくれて、決まったお店に集合してくれる。これは一度に多くの人にご挨拶ができる上に、来れる人は来て、都合の悪い人は来ないで済む。不公平も生まれにくく、ありがたかった。街の方々は毎回、歓待してくれて、撮影時の思いで話に花が咲く。

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 でも、あるとき、その会を終えて東京に戻ると、その中のお1人からメールが来ていた。「今後、来るときは1週間前くらいに事前に連絡してください。急に来て招集されても迷惑です。こちらにも生活がありますので」と。それなら欠席してくれてもいいのだが.....お会いしたときは笑顔で対応してくれたのに、実は迷惑だったと分かり。心が沈んだ。

 ただ、僕も1週間前に予定を立て、その街にお寄りするという形は取れない。監督業はご存知のようにブラック企業を超える仕事量。スケジュールも突然変わる。帰京予定日が変わったり、現地に予定以上に滞在したりもする。そんな中で帰京途中。「あ、今日なら**市で途中下車できる。明日、東京に着けば仕事にも影響しない。きっと喜んでくれるだろう」と、その街を訪ねる。

 けど、地元の方も急に来られては困る方がいるという現実。笑顔で迎えてくれても内心は迷惑。他の方々も笑顔で接してくれるが、実は「急に来られてもなあ〜」と思いながら我慢していたのではないか? ある街を訪ねると、他の街から不満が出る。「D街も行くべきだ」と注意される。もちろん、本当に喜んでくれている人たちも多いだろう。でも、次第に分からなくなってくる。

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 それに、地元の方の要望を全て受け入れることはできない。本業に大きな影響が出てしまう。一部の声だけ受け入れても、また別のところから不満の声が上がる。何をしても、良かれと思っても、誰かが嫌な思いをする。誰が悪いということではないのに、歯車がどんどん噛み合なくなっていくような、悲しさを感じる。もしかしたら、何もしないこと。誰も訪ねない方が人を傷付けず、迷惑かけないのかもしれない....。

 そんなとき、ウッディ・アレンの話を思い出した。もちろん、彼は大スターで僕なんかは今も無名の監督。同じレベルでは語れないが、アル・パチーノも、ロバート・デ・ニーロも、ウオーレン・ベティも、人嫌いと言われているたぶん、僕が体験したことの数百倍も何千倍ものことを経験したのではないか...........そんなことを考えてしまう。


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