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「朝日のあたる家」太田隆文監督インタビュー/一番うれしかった取材がこれ! [インタビュー]

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 太田隆文監督インタビュー。「朝日のあたる家」公開時(2013年)いろんな取材を受けたが、最も記憶に残る嬉しいインタビューがこれ。以下のアドレスから今も読める。 その下に記事から一部引用したものをコピー。

こちらです=>http://sarunet.com/feature16.html

ー原発が題材ということで、もしかしたら小難しい教育映画なんじゃないかと思ってたんですが、全然そんなことはなくて、映画としてとても面白かったです。

太田監督 人権問題、差別問題などの教育映画ってありますよね。その多くは「差別はいけないよ!」って前面に押し出しています。想いがあって作っているし、正しいことなんだけど、見終わった後に説教された気にしかならない。それは映画的技法として観客がどう思うかじゃなく「あなたはこれを知らなきゃいけないんだ!」と押し付けに近い形になっているからなんです。ぼくは多くの人に、福島の人の気持ちや悲しみを伝え、考えてもらいたいんです。決して押し付けたいわけじゃない。

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ーー冒頭も丁寧に家族が描かれていて、物語に引き込まれて行きますよね。

太田監督 観客の皆さんには、平田家の5人目の家族になってもらわなきゃいけない。平田家の一員として同じように避難して、仮設住宅に入って、病院に行ってもらう。その為には家族をしっかり紹介する必要があったんです。昔のパニック映画って30分くらい永遠と人の話なんですよ。それから船が沈んだりビルが燃えたりする。

でも最近のハリウッド映画はそこを短くしていて。今はシナリオで、登場してから30秒以内にその人物を紹介しなきゃいけないんです。長い人間ドラマの後、最後に事故が起こっていたのが、今は事故がほとんで。それで面白くなったかというとそうではない。それは人間が描かれていないからなんです。ジェームズ・キャメロンがすごいのは「アバター」も「エイリアン2」も頭から戦闘シーンがない、だから30分くらい退屈なんです。でもそこをしっかり描くからハラハラドキドキ感動するんです。

ーーなるほど。

太田監督 ぼくもハリウッドで映画を勉強していましたし、「朝日のあたる家」もハリウッド映画的な作りをしています。最終的には伝わらなければ意味がないので。

ーー監督はどういう映画に影響を受けてきたんですか?

アメリカン・ニューシネマです。「俺たちに明日はない」「いちご白書」「明日に向かって撃て!」「イージー・ライダー」、1960〜70年代の映画です。主人公はみんな死んじゃうんですけど。

ーーそもそも、原発を題材にした映画を作ろうと思ったきっかけはなんだったんですか?

太田監督 まさか自分も原発を題材に映画を作るとは思わなかったです。映画監督に限らず作家も、興味をもったら調べたくなる。調べて行く中でそういう題材に出合ったりするんですよね。伊丹十三監督も税務署に沢山持っていかれて、「なんでこんなことになるんだろう?」って調べたら、マルサというのを知って、「マルサの女」を作ったように。

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ーー今回の製作にあたって、どのような取材をされたんですか?

太田監督 特別なルートやコネがあるわけじゃないので、新聞三大紙のバックナンバーを全部読んだり。ゴシップ雑誌はスキャンダラスなことが多いので、デマや憶測が多い。でもその中に本物が隠されている場合もあるのでチェックします。あとはワイドショーを12番組ぐらい全部録って原発のところだけ見たりしました。ここまでが第一段階。そこから福島に行ったり、避難してきた人にインタビューしたりしましたが、それだけでもメディアで聞いたことのない話が沢山ありました。

ーーそれが「朝日のあたる家」に反映されているんですね。

太田監督 本当に僕の想像を遥かに超える悲しいエピソードばかりだったんです。だから物語に出てくるエピソードは全部本当の話で、極端な脚色で作った話は1つもないですよ。どんなクリエイターが考えた言葉よりも、現実は物凄いなと思って。脚本を書いていても泣くし、編集して泣くし、撮影中にスタッフも泣くし。この作品が何回見ても泣けるのは、実際にあったことでドキュメンタリーのようなものだからなんです。そういう色んなエピソードを選択して平田家に置き換えて、原発の話も入れて2時間の映画として見せなければいけなかったわけです。

ーー全て実際に起きていたことだったんですね。TV・新聞で見聞きするのとは、また違った衝撃というか、すごく響きました。

太田監督 TVや新聞は情報で、情報って忘れちゃうんですよ。去年のTVドラマも意外と覚えていないのは、情報だからなんです。でも30〜40年前の映画は、タイトルや役名まで覚えている。ラブストーリーなら一緒に恋をし失恋し傷付く。インディ・ジョーンズなら一緒に冒険しハラハラする。映画は体験なんです、だから覚えている。もちろんテレビや新聞は多くの人に知らせる強みがあります。でも福島のことを忘れて行くのは情報を得ているからなんです。どうすれば忘れないか、思い出せるか、やっぱり体験だと思うんですね。だから映画にしなきゃいけないと思ったんです。

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ーー僕はこの映画、反原発・原発推進、どちらかを勧めるような作品ではないと感じたんです。ただ、原発に限らず、見た人が色々考えるきっかけになる良い作品だなと思いました。

太田監督 すごく良いところを見てくれて嬉しいです。よくマスコミの方から「監督、これは反原発がテーマですよね?」と言われるんですが。「違います、原発事故が題材の映画です。反原発がテーマの映画ではないです。」と言うんです。だって平田家の誰も「原発のせいで俺たちはこうなった」とか「原発やめよう」とか言わないですよ。後半は原発の”げ”の字も言わない。あくまで家族のドラマなんです。その中の背景として原発事故がある。これは映画の題材が戦争でも地震でも成り立つわけで、だからこそ見えてくるものがあるんです。

ーーテーマはなんだと思いますか?家族の関係性みたいなものですか?

太田監督 そうです、「家族の幸せってなんだろう?」というのがテーマなんです。家族の幸せって中々見えないもので。悲しいことに人って、戦争が終わって命の大切さに気付き、公害があって自然の美しさに気付く。これから日本人が何を価値観に、何を大切に生きて行くかが、今は試されている気がするんです。


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ーー「朝日のあたる家」は静岡県の湖西市が舞台です。僕は行ったことないんですが、映画を通してすごく好きになりました。湖西市を舞台にしたのはどうしてでしょうか?

太田監督 福島のことを忘れて行ってしまうし、他人事だと思うことがいけないという所から始まってるので、福島を舞台に作ったら「福島大変だよな〜、可哀想だよな〜」で現実と変わらない。東京や大阪では個性がありすぎるし、その街の話になってしまう。湖西市がいいなと思ったのは、特別なものがないんですよ。でも昔、日本のどこにでもあった原風景が沢山ある。それを見た時にみんな「うちの田舎、昔こうだった」とか「うちの田舎は今もこうだ」とか、自分のふるさとのように思って見てくれる。自分のこととして考えてもらうにはそこが大事で、平凡などこにでもある街、それでいて美しくて懐かしさがある街である必要がある。そこが湖西だったんですね。

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ーー個人的に興味深かったのが、「朝日のあたる家」の製作費1,000万円は市民の方などから集めたと聞きました。一般的な製作費はどれくらいなんですか?

太田監督 メジャー映画は2億円くらい、独立プロやインディーズでも3000万円は必要でしょう。僕が今まで撮ってきた映画は全部3,000万円です。でも3,000万円集めて撮るのも大変ですよ。ぼくは自主映画出身で、貧乏性で節約する方なんで、1,000万でも作れるんじゃないかと思ったんです。

ーー製作期間は?

太田監督 これは制作費から逆算しなきゃいけなくて。昔は2時間の映画を30日間で撮っていましたけど、今は3週間で撮るのが主流なんです。3週間で撮るには、最低3,000万円必要です。簡単な計算でいうと、1日100万円というのが基本的な考え方。1,000万円で撮るなら10日間でやろうと。前作が3,000万円で3週間だったから、その半分でやればいい…朝6時に早起きして、陽がくれるまでやって12時間。さらにあと6時間、夜中まで頑張れば2日分を1日で撮れるなと。だから10日間で撮り切ったんですけど、大変でした(笑)。

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ーー市民の方もエキストラとして多く参加されたそうですね。

太田監督 エキストラどころか、「市民俳優」といって台詞のある方も多いですよ。ぼくは映画を作る時に必ず地元オーディションするんです。俳優では出来ない芝居や存在感、その”町感”を出すのが大事なので。ずっと農業や漁師をやっている人の顔や存在感は役者じゃ出せないですよ。映画の中で手話やっている人とか居たでしょ?

ーー居ました。

太田監督 本物の方なんですよ。障がい者の方こそ災害の時に一番大変で、でも絶対にメジャーな作品では出てないですよね。そういうところをあえて描いてます。あとエキストラの方って、笑ってたり疲れてたりする場合が多いんですけど、今回は全員真剣ですよ。だからこれは市民の人達と一緒になって作れた「市民映画」なんですよ。

ーーこうして完成した「朝日のあたる家」ですが、公開する劇場が中々決まらないという問題があったようですが、予想は出来ていましたか?

太田監督 大手では上映出来ないだろうと予想は出来ていました。でもドキュメンタリーをやっている単館でも上映出来なかったのは予想外でした。その人達に言われたのは「原発はヤバいからやらないんじゃなくて、原発映画は客が来ないからやらない」ということで。商売だからいいんですけど、それだけでやっていたんだなと。

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ーー「朝日のあたる家」で原発を題材にしたことで、今後商業映画が撮れなくなる可能性もあるそうですが。

太田監督 昔から可愛がってくれている先輩が心配して「商業映画撮れなくなっちゃうぞ」とか、別の業界の友人からは「せっかく青春映画の爽やかなイメージだったのに」って言われたりしたんですけど。僕は毎回遺作だと思って映画を撮っているんです。それぐらいの気持ちでなければ良い作品は出来ないんじゃないかとも思っていて。もし「朝日のあたる家」を作らずに、商業映画を撮れたとしても、それは見た人に伝わらないと思うんですよね。僕が作りたいものを作らずに、商業映画を作ったということを知らなくても。

ーー1作目「ストロベリーフィールズ」、2作目「青い青い空」と比べると、今作は社会派に寄っている気がするんですが、元々そういう作品を撮りたいというのがあったんでしょうか?

太田監督 「ストロベリーフィールズ」「青い青い空」と女子高生の青春映画を作りました。それは子供達を応援したいというテーマで作っていたんですけど、最近は「親子に伝える」というのをテーマに作りたいと思っているんです。そうすると今伝えなきゃいけないことは、原発事故から見えてくるじゃないかと思ったんですね。直接的なテーマにはしていないですけど、過去2作も、いじめ・教育・親子の対立・就職などの社会的問題が背景にあった上での物語なんですよね。今回は原発事故を背景とした家族の物語なんで、実は同じなんですよね。

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ーーでは最後に、メッセージを。

太田監督 原発に興味がない人に見て欲しい。だからこそ映画館での上映にこだわってきたんです。山本太郎さんを役者として見たことがない若者も沢山居ると思うので、そういう興味でもいいいですし、いしだ壱成さんと北原雅樹さんもドラマ「未成年」以来の共演なんですよ。そういうところでもいいです。なんでもいいんですよ。間違って来ちゃったでもいいし(笑)。だからこそ説教みたいな映画にしちゃいけなかったし、工夫をしています。多くの人に見てもらいたいというのも月並みですけど、本当にそういう気持ちです。


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太田監督インタビュー。 これはとても嬉しい記事! [インタビュー]

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 太田監督インタビュー。

 これはとても嬉しい記事です。

 インタビュー本文よりー「朝日のあたる家」がよくある教育的映画ではなく、
家族の絆を描いた心震えるエンターテインメント作品で面白いからこそ、この
特集記事を組んだことをご理解頂きたい。

 ここ=>http://sarunet.com/feature16.html



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朝日のあたる家ー太田監督インタビュー&解説。この記事はスゴイ! [インタビュー]

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(記事の一部をご紹介)

Qー原発が題材ということで、もしかしたら小難しい教育映画なんじゃないかと思ってたんですが、全然そんなことはなくて、映画としてとても面白かったです。

太田ー人権問題、差別問題などの教育映画ってありますよね。その多くは「差別はいけないよ!」って前面に押し出しています。想いがあって作っているし、正しいことなんだけど、見終わった後に説教された気にしかならない。それは映画的技法として観客がどう思うかじゃなく「あなたはこれを知らなきゃいけないんだ!」と押し付けに近い形になっているからなんです。ぼくは多くの人に、福島の人の気持ちや悲しみを伝え、考えてもらいたいんです。決して押し付けたいわけじゃない。

Q−冒頭も丁寧に家族が描かれていて、物語に引き込まれて行きますよね。

太田ー観客の皆さんには、平田家の5人目の家族になってもらわなきゃいけない。平田家の一員として同じように避難して、仮設住宅に入って、病院に行ってもらう。その為には家族をしっかり紹介する必要があったんです。昔のパニック映画って30分くらい永遠と人の話なんですよ。それから船が沈んだりビルが燃えたりする。

でも最近のハリウッド映画はそこを短くしていて。今はシナリオで、登場してから30秒以内にその人物を紹介しなきゃいけないんです。長い人間ドラマの後、最後に事故が起こっていたのが、今は事故がほとんで。それで面白くなったかというとそうではない。

それは人間が描かれていないからなんです。ジェームズ・キャメロンがすごいのは「アバター」も「エイリアン2」も頭から戦闘シーンがない、だから30分くらい退屈なんです。でもそこをしっかり描くからハラハラドキドキ感動するんです。

Q-なるほど。

太田ーぼくもハリウッドで映画を勉強していましたし、「朝日のあたる家」もハリウッド映画的な作りをしています。最終的には伝わらなければ意味がないので。

Q-監督はどういう映画に影響を受けてきたんですか?

太田ーアメリカン・ニューシネマです。「俺たちに明日はない」「いちご白書」「明日に向かって撃て!」「イージー・ライダー」、1960〜70年代の映画です。主人公はみんな死んじゃうんですけど。

Q−そもそも、原発を題材にした映画を作ろうと思ったきっかけは、なんだったんですか?

 
 続きはこちら!=>http://sarunet.com/feature16.html


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