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なぜ、人は些細なことで争い、相手を踏みつけてしまうのか?(後編)=故郷愛が強く、他人を許せない兄ちゃんの葛藤。 [思い出物語]

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なぜ、人は些細なことで争い、相手を踏みつけてしまうのか?(後編)=故郷愛が強く、他人を許せない兄ちゃんの葛藤。

映画監督である友人が地方で故郷映画を作った時、こんなことがあった。最初は熱烈応援してくれた地元の兄ちゃん。些細なことから「だったら協力できないな!」と言い出した。その街を舞台にした映画を作ることは、全国に故郷をアピールする絶好の機会。多くの人が支持、支援してくれている。

その兄ちゃんは地元メンバーの1人。強い故郷愛があるので、当初はあれこれ協力。それが、ある頃からスタッフ批判を始めた。「愛が感じられない...」「思いがない...」という。監督にも文句を言い出した。他の地元メンバーは

「スタッフの人はよくやってる。そもそも他県の人に、地元愛がないと批判するのも変!」

と困惑顔。結局、兄ちゃんはメンバーから外れた。そして、町の飲み屋で仲間を集めて「あいつらは俺たちを利用して映画作りをしている!」と演説。ネットでも毎日中傷ツイート。アンチになってしまった。同調し一緒になって批判する地元の人も出て来た。

しかし、友人のチームはいつも、スタッフ&キャストに街を好きになってもらうところからスタートする。町の歴史を学び、地元食材のおいしさを知り、事前に何度も訪れて町の魅力を確認。通常の映画ではしない努力をする。それでも「町に対する愛がない」と批判。映画を踏みつける発言を続けた。彼は少々、思い込みが強いタイプであり、注意するとエスカレートするので、地元メンバーは静観。

もし、そのことで制作サイドが「だったら、もう止めよう」と撮影を中止したらどうするのか?あるいはやる気をなくして、詰まらない作品になったら? 町の多くが映画を楽しみにしている。地元を全国にアピールする機会。それを潰してしまうかもしれない...。その話を聞き、先の反原発オジさんを思い出した。原発反対なのに同じ思いを持つ若者を批判、踏みつける。比較してみよう。

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「原発は無くすべきだ」

と思いながら、オジさんたちは同じ思いの若者を「努力が足りない」と批判する。心の中では

「俺も頑張って来た。賞賛されて当然だ。なのにマスコミは若い奴らばかりチヤホヤする!」

そう感じる。友人が出会った兄ちゃんは「俺は故郷愛がある」と言いながら、その故郷の魅力を理解するための努力を続けるスタッフを「愛がない」と踏みつけにする。その心中は?監督である友人が解説してくれた。

「彼は最初、スタッフの奮闘を喜んでくれました。県外の人がここまでしてくれる!でも、何度も会っている内に、僕らを身内と思うようになった。冗談を言い合う。一緒に酒を飲む。外部の人と頭では理解しているけど、街を愛する思いを持つ者同士と...。だったら、もっと頑張らないとダメだろう...と考えるようになった。

もし、僕らが町を好きになろうという努力をしなければ、所詮は外部の人と期待しなかったでしょう。でも、努力したことで、思いは同じ!と思い込み、もっともっと!まだ足りない!となった。でも、スタッフにはそこまで出来ない。許せない。騙された。こいつらは最初から愛なんて、なかったんだと彼は考えた.....。

それを耳にしたスタッフは、ーそこまで言われてもねえ。町への想いなんて消えたよ。仕事してさっさと帰ろうーと言い出す...それに、作り手は溢れる愛があるのはむしろ危険。少し冷めていないと、その町の魅力を冷静に見つめ、地元の人が気づかない良さを伝えることはできないんです...」

悲しい話だ。幸い、僕が撮影した街ではそんな事件はなく、多くの人の協力で毎回、素敵な作品を作ることができている。それだけに、友人の話。あまりにも辛い。故郷愛が強い人が一番故郷を貶めていること。それに本人が気づいていない。悲しいとしか言えない。

(了)


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