今日は3月11日。あれから12年が経った。 [2023]
今日は3月11日。あれから12年が経った。
原発事故の悲劇を描いた映画「朝日のあたる家」のクランクアップが10年前。そして今日まで本当にいろいろなことがあった。原発事故から日本の歪みや醜悪が噴き出して来たような気がする。
それが現在、コロナ、コオロギ、プーチン、ワクチンにまで繋がっている。少し前になるが、若い友人からこんなことを言われたこと。思い出した。
「日本の映画監督って何で、社会や政府に対してもの申さないんですかね?彼らのブログやTwitterを見ても映画のことばかり。***を見た。**は才能を感じないとか、評論家みたいなことしか書かない。いや、映画ファンレベルですね!
昔の映画監督って、大島渚は政治家にーバカやろーって怒鳴っていたし、黒澤明は原爆や原発の映画作った。伊丹十三監督はマルサやマルタイと僕らが知らない世界を伝え、医療問題に切り込もうとして自殺。殺されたって話もある。なのに今の監督ってどうなの?って感じ。
映画作らなくても、社会や政府にSNSで意見を発信すればいいのに。小泉今日子でも意見する。政治的発言だ!と言われるのが怖いのか?その点、太田さんは偉いすよ。コロナ、ワクチン、トランプ、プーチンまで自分の意見を発信しているし!」
いや、僕も同じだ。何も変わらない。原発事故が起こるまで僕も、友人が批判する、まさにそんなタイプだった。映画にしか興味がない。読む本は映画関係。巨匠の自伝や映画技法。人と会っても映画の話しかしない。
オリンピックも、WBCも、24時間テレビも見ない。初詣も、クリスマスもしない。当然、SNSで発信するのは自分の新作映画のアピールと、最近見た映画の感想ばかり。若い友人の指摘通りであった。
それが12年前の今日。2作目の監督作品が終わり、過労で何ヶ月も寝込んでいた時。東日本大地震。テレビ中継で見ていた地震の様子。その中に巨大な高波が原発を襲う映像。アナウンサーは何も説明しなかったが、あの建物は原発だ。
その後、原発事故報道が始まる。映画にしか興味がない僕だが、原発事故は衝撃的だった。食い入るようにしてテレビを見ていた。体調が少し回復してからはリハビリ代わりに図書館に通い、原発報道を各社の新聞、雑誌で調べた。
そこにはテレビが伝えない事実、驚愕の事実が綴られていた。SNSでも調べる。小出裕章先生の「種まきジャーナル」を聞く。原発関連の書籍を読む。最初は「真相を知りたい!」だけだったが、あれこれ考えて映画にすべき、多くに伝えるべきと思うようになった。何かしなければいけない!衝動に駆られた。
それが「朝日のあたる家」となった。数年後、映画を見た団体から依頼。「ドキュメンタリー沖縄戦」がスタート。こちらは6年勉強している。まさかの3部作となり、今、最新作を編集中。沖縄戦も、沖縄戦だけ勉強すればいいと言うものではない。太平洋戦争、日中戦争、ヨロッパ戦線、それらは過去の出来事ではなく、現在にも続いている。
ただ、僕も少し前までは映画にしか興味のない映画屋だった。昔、漫画家の本宮ひろ志がこう言った。「俺に弟子入りしたいという若い奴。漫画しか読んでない。俺の漫画読んで感動して弟子入りに来る。それじゃ漫画は描けない。社会経験なしに物語は作れない!」
同じように映画が好きで、映画作りたくて、社会経験もないのに、専門学校出て、学生映画やってて、監督になった人たちが多い。僕もその1人。だから、映画のことしか話さない。映画にしか興味がない。だから社会のことを知らない。大島や黒澤や伊丹のような巨匠たちのように、社会に切り込むことが出来ない。
ただ、12年前の原発事故に興味を持った。原発を探ると背景に汚れた日本が見えてくる。隠されていた現実が見えてくる。僕が49歳の時。つまり、社会勉強を始めたのはそこから!?それまでは映画のことだけ!50代は本当によく勉強した。脳の老化で記憶力減退の時期だが、よく覚えた。中学高校時代どころではない量の勉強をした。
戦後、日本を統治したのはA級戦犯。その孫がこの間まで君臨していた。戦争は過去の歴史ではない。全てが繋がっている。そして、感じていた疑問、理不尽の数々の謎が解けてきた。沖縄戦だけではない。日米地位協定、日米合同委員会、辺野古基地問題、オスプレー、基地問題。その背景にあるもの?そんな勉強を続けて感じたこと。
巨匠たちには追いつくのは困難だが「隠された事実を伝える作品に作りたい!」「いつまでもダマさていてはダメだ!」と思うようになった。ま、僕の場合は低予算のドキュメンタリーだが、今は予算があり、組織力があるほどに本当のことを伝えられない。その意味でラッキーなポジションにいると言える。どこからも圧力をかけられないフリーな立場なのだ。失うものもない。
そして今はテレビや新聞が伝えない事実を、映画で伝える時代ではないか? 人々が求めているのは、そちらではないか?大手映画会社のシネコンでは無理だが、そんな作品でも映画館は発信できる。第三弾。そんな思いで編集。全ては12年前に始まったと思えている。
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