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「考える力」シリーズ=日本人がテレビを信じてしまう理由、背後に潜む怖い背景。 [「朝日」DVD発売ー再掲載]

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僕がよくランチを食べて行く近所の店。

タクシー運転手さんの常連客が多く、マスターを中心にいろんな話をしている。映画監督業をしていると、一般の人との接点が少なくなるので、その店に行くと中高年の男性が何を考え、何に関心を持っているか?がよく分かるのでいい勉強になる。

話を聞いていると、政治経済のことが多く、さすが社会人と思える。居酒屋で学生の飲み会の話に耳を傾けても、その手の話が出ることはない。その店では特にマスターが率先して話をする。「昨日、閣議決定された***法案。あれはとても問題があるんだよ」とか、お客に解説。僕よりもひと世代以上の方なので、やはり政治に対する関心度が高いのだと思えた。

が、ある日。マスターの話を聞いていて、「あれ?」と思えた。どこかで聞いたことあるような........あ、昨夜「報道ステーション」で古館さんが言っていたのと全く同じことを言ってる。それを自分が考えたように、ほとんど一字一句同じことを話していた。通常なら「今日の『報ステ』でキャスターが言ってたんだけど...」という前置きをして話すだろう。でも、そうではない。

ネタ元を隠して、

自分が政治通であることをアピールしたいのか? とも考えたが、『報ステ」は人気番組多くの人が見ているので、すぐにバレる。いつか「それ昨日、古館さんが言ってたことだろう?」と指摘されたら、マスターの信用はがた落ちだ。それにネタ元を隠し、自分の意見としていいたいのなら、出来る限り、表現法を変えて、自分の言葉にして話せばいいのに、それもしない。昨日聞いた報道のまま。なぜだろう?

そこから分かること。ひとつにはマスターは非常に記憶力がいい。話を聞いていて昨日のニュースの再放送かと思うくらいに、正確に内容を伝える。通常、人に聞いた話でも、細部まで覚えておらず「****らしいんだ」「よく分からないけど***ということで」という表現になりがち。それを淡々とよどみなく語る。

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もうひとつには、古館さんの言葉をそのまま伝えているという意識がマスターにないような気がした。先にも上げたように自慢したいのなら表現を変えるだろう。そのまま言えばすぐにバレる。なのに、そのまま話すのは、彼の中ではそれは自分の意見になっているのではないか? 聞いた話でも、何度も話している内に自分が考えたことであると思えて来る経験。ないだろうか?

そこから分かること。

マスターは昨日の「報ステ」を見て、古館さんの解説を理解。それを無意識に自分の意見になってしまい、客に話していたのではないか?よどみなく99%ほど同じ言葉で話す。学習能力が非常に高い人だと思える。しかし、それが古館さんだからいいが、もし、これが御用学者なり、よからぬ思想を持つ政治家だとどうだろう?

というのも、マスターは古館さんの言葉に共感を覚え、その話を店でしたというより、テレビ報道だから、正しいと思いと考え、それをそのままお客にしたのではないかと思えるのだ。マスターだけでなく、多くの人が「テレビが言っていた。テレビで聞いたから本当だ」と思いがち。テレビが嘘ばかり流していること、分かって来たのは最近。311以降である。それでも今も多くの人がテレビは正しいと思い込んでいる。マスターも報道を疑いもせずに人に伝えた。それも「***さんが言っていた」ではなく、自分の意見になっている。

これは怖い話だ。それを利用すれば、間違った法案でも、おかしな条例でも、テレビを通して正しいものだと伝えれば、多くの人がそれを受け止め、自分の意見としてあちこちで話すということだ。

例えば、それを利用して

「景気がよくなった。国民の平均所得が10%上がった」

とテレビで報道すれば多くの人が、「実感はないけど、景気はよくなってるんだ。よかった。よかった」と思うのではないか? 「福島原発事故は収束しました」とテレビで流せば、「そうか、収束か! よかった。よかった」と思ってしまう。そして、都合の悪いことはテレビを通して伝えない。どかこで大掛かりな反対デモがあっても、テレビが伝えなければ、デモは行われなかったのと同じになる。

マスターを見ていて怖いと思ったのは、ニュース報道を受け売りしている意識がないこと。自分の意見だと思い込んでいることだ。このときは古館さんの言葉だったからいいが、そうでない人の言葉でも彼は受け止め。自分が気づかぬ内にそれが自分の意見になってしまうのではないか? いや、マスターだけではない、多くの人が同じ思考をしているのではないか? まるでSF映画。テレビを通じて伝えれば皆、それが自分の意見になる。怖い話だ。

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なぜ、そうなってしまったのか? それは子供の頃からの教育が大きく影響しているのだろう。日本の教育は与えられたことを疑わずに覚える。たくさん暗記した人が優秀とされる。そんな学校で、考える教育はほんの少ししかない。19年もそんな教育を受けてくれば、上から与えられるものは疑わず、記憶するという思考回路ができてしまうのではないか? それがまさに先のマスターである。いや、多くの日本人の思考回路も同じだろう。

でも、そんな思考をする人。

特に記憶力のいい人は企業にとって有効。与えたことを確実にする。上からの命令を疑わない。指示したことがいつの間にか自分の意見になる。完璧なサラリーマンロボット。これは政治家から見ても同じ。マスコミをうまく使えばどうにでもなる。どうも最近、そんなロボット人間を作るのが日本教育の目的だったこと。強く感じる。だが、それでは21世紀を生き残って行くことができないことも、分かって来た。教育で奪われた「考える力」がどれだけ大切か、次第に見えて来た...。





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