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話題作を続けて撮っている後輩監督。でも、彼はハッピーではない? [映画業界物語]

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 話題作を続けて撮っている後輩監督がいる。

 有名俳優が出演。ベストセラー原作。大手映画会社の製作。予算も2億、3億というスケール。大手のシネコンで公開。カタギの友人に訊いても、こういう。

 「ああ、あれねえ。テレビでもバンバン予告編やってたから知っているよ。お前も早くああいう大作を撮れるようになれよ!」

 後輩は誰もが羨む環境で仕事をしている。が、本人はこういう。

 「うらやまれることなんて全くないですよ。

キャストは最初から決まっている。僕が**役は***さんがいいと言ってもダメ。原作を選んだのも会社。音楽も、スタッフも皆、会社が決める。僕は撮影の1ヶ月くらい前。全てが決まってから呼ばれて監督してほしいと言われる。あとは撮影現場に行き、カット割りをするだけ。

 内容や方向性。テーマについても一切、意見を言わせてもらえない。言っても聞いてくれない。おまけに、その日になってから、キャストの***さんは今日は来れないので、なしで撮影してくださいと言われる。何それ? 話繋がらないだろ?無理やり人気俳優をキャスティングするからそういうことになる。

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 でも、その中でやらなければならない。スケジュールも決まっていて、その期間内に撮影しなければならない。演出の冒険はできない。オーソドックスに撮ることを強要。クオリティが高くなくても、そこそこのものを撮ればいい。内容よりも予算と期日が大事。これじゃ誰が監督しても同じ。いい加減うんざりする。でも、それなりのギャラをもらうから我慢している。

 誰も個性的な作品なんて期待していない。

上のいうことを逆らわずに聞く監督が求められている。本当に苦痛で爆発しそうになる。クリエイティブはゼロ。言われたことをするだけ。なのに、皆、羨ましがる。こんな仕事。監督でもなんでもない。単なる仕切り係。いつか見ていろと思うから我慢しているけど、本当に息が詰まる。こんなことをするために監督になったんじゃない....」

 彼はそう言っていた。

 僕は本当に撮りたい作品しか撮らない。だから、仕事が少なく、経済的にも大変。けど、あれこれ言われてもいいものは絶対にできない。言われたことをおとなしく出来るようならサラリーマンになっていた。それができず、自分の考える物語を映画にしたいから映画監督の仕事をしている。

 後輩監督の気持ちは痛いほど分かる。

ただ、自分が撮りたいものを撮るのは至難の技だ。毎回、宝くじに当たるようなもの。そして、決して何億もかけた大作を監督することはできない。どちらが幸せなのか? 言えることは、僕には後輩の真似はできない。あれこれ言われたら、いつか爆発して、プロデュサーを殴ってクビになり終わるだろう。それを我慢している後輩は偉い。

 けど、後輩のいうとおり、今のままでは映画監督ではない。カット割り係に過ぎない。誰が撮っても同じ。彼の作品で「お!」と思えるものは1本もない。原作を短くして映像化しているだけ。感動も涙もない。ただ、それが映画界の現実でもある。その意味で、本当に撮りたいものしか撮らない僕は幸せものかもしれない。どんなに経済的に大変でも、そこだけは恵まれている。とはいえ、後輩とは違う様々な問題を抱えている。その辺はまたいずれ紹介したい...。





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