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「原発ホワイトアウト」④ー官僚たちの悪辣な手口を暴露した物語。これはノンフィクションだ。 [【再掲載】]

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 「原発ホワイトアウト」昨年末に読み終えたが、

 あまりにも嫌な後味で

 すぐに感想が書けなかった。現役官僚が書いた官僚と電力会社の「裏事情暴露物語」ともいえるセンセーショナルな小説。

 もちろん、それを鵜呑みにせず、疑ってかからなければならない。テレビ番組ではよく、衝撃の真実とかいって、全てヤラセであることもある。「アポなし突撃取材」といいながら、事前に綿密な打ち合わせをした上で突撃していることもよくある。311以前の原発広報も同じ。「原発は安全です」「放射能は漏れません」「安全でクリーン。安いエネルギーです」といいながら、全部ウソ。フクシマ原発は爆発するは、放射能は全国に拡散する。安いどころか他より高く着いていた。

 なので、この小説もまず、疑ってかかった。

 原発問題に関しては映画「朝日のあたる家」を作るときにかなり勉強した。その部分でいうと、かなり正確に電力会社や官僚組織が描かれている。「総括原価方式」等の話も出て来る。が、この辺は素人である僕でも知っていることだが、他にも様々な記述が非常にリアル。官庁で働いているからこそ書ける情景や官僚たちの心理。その辺が非常に説得力がある。


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 そして、何より文章がうまくないということ。小説と言い辛い。プロの作家が書いた文章ではない。表現も固く、日頃、著者は真面目な文章しか書かない人だ。ということは、現役官僚が書いたというのは現実味を持つ。小説によりエンタテイメントを書いたのではなく、小説という形を取り、官僚や電力会社の実態を伝えようとしたのだと思える。原発問題はこのままではいけない。それを止めるために、推進派の手の内を暴露したというのが、この小説に意図だと思える。

 著者のインタビューをネットで調べて読むと、

 新潟県の泉田知事へのメッセージだとも答えている。ご存知の通り、あの柏崎刈羽原発の再稼働を認めない知事。全国の首長は次々に了承しているのに、頑に拒否。そんな泉田知事を官僚たちは罠に嵌めて、逮捕させようとする展開が「原発ホワイトアウト」では描かれている。彼の親族の会社を不正取引に巻き込み、知事も関与していたと見せかける。それを電力会社が中心となり、新聞に疑惑記事を書かせ、首相を動かし、検察庁を使い、罠を仕掛ける。

 それに引っかからないでほしい。というのが著者の願いであり、泉田知事へのメッセージだったという。それは届いたようだ。小説ではラスト知事は逮捕され、副知事が再稼働を承認するのだが、2015年に泉田知事は逮捕されていない。こんなふうに登場人物も、モデルが誰だか分かる者も多い。山本太郎、河野太郎も登場する。なぜか、古賀茂明さんだけは実名で登場するが、物語には関わらない。

 そんな「原発ホワイトアウト」を読んで感じたこと。

 官僚たちの考え方。小説によると、彼らは「俺たちは一般大衆とは違う。俺たちは特別な存在である。だから、それなりの待遇を受け、恩恵を得るのが当然」と思っている。最高峰は東大・法学部。学部が違うだけで、軽蔑の対象になる。政治家をも軽く見ており、原発が日本の経済に不可欠ものであるという資料を上げれば、別経由でそれを調べることもなく、鵜呑みにする存在と考えている。

 彼らの最大の目的は自分たちがいかに豊かな生活ができ、それが保証されるか? そのためには自分が所属する省庁が功績を上げるか? おいしい利権を手に入れ、面倒なことを他の省庁に押し付けるか? が物語で何度も描かれる。原発を推進するのは日本経済のためではない。原発は他のエネルギーより金がかかるのは分かっている。が、それを隠し、進める。再稼働することで、自分たちが儲かり、潤うからだ。つまり、原発推進派のほとんどは儲かるから推進している。「日本のため」や「電気の安定供給」のためではないという。

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 読んでいて、あーなるほどなあ。だから、あの官僚はこんなことを言ってたのか? あの大臣はあんなことを言わされたのか? 電力会社の対応はああなんだ。と思い出すことが多い。彼らは世論を気にしながら、それをマスコミと組んで操り、国民に本当のことを知らせないようにして、自分たちだけが裕福で安定した生活を送るために日夜、働いているということが伝わったくる。

 物語の最後で、何と!津波や地震以外にも原発の弱点があることが描かれる。

 これはどこかで聞いた話ではあるが、こんなことを書いて、マネをする輩が現れるかもしれないと不安になるが、ま、日本を混乱させようとする人たちがいるなら、すでに知っているだろう。その方法で新潟の原発が絶体絶命に追い込まれるところで物語は終わる。つまり、政府や電力会社が行っていることは、安全性より、自分たちの利益が優先であり、その先にある崩壊をいかに国民に知られずに、その崩壊を防ぐ手だても考えず、突き進んでいるか?を訴えるエンディングである。

 だが、著者はインタビューでこういう。

 「悪辣な官僚はほんの一部。多くの官僚は真剣に日本の未来を考えている。でも、なかなか動くことができない」そんな真剣な官僚の1人が古賀茂明さんということなのだろう。だから、実名で登場する。そんな真剣な官僚たちを応援する方法。それは国民が官僚や電力会社の思惑を知り、NOを突きつけること。そのためには手の内を伝えなければ!と書いたのがこの小説だと思える。

 発売が2013年の秋なのに、読み終わったのが2015年の冬。2年もかかってしまったが、興味ある方はぜひ、お読み頂きたい。ブックオフ等で格安で手に入るはずだ。


 続編の「東京ブラックアウト」の紹介、感想はこちら=>http://cinemacinema.blog.so-net.ne.jp/2016-01-05-5

 
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