映画評論家 永田よしのりさんの感想(1)悲しみの放列の中で [「朝日のあたる家」観客の感想]
BY 永田よりのり
5月12日
ロサンゼルスのジャパン・フィルム・フェスティバル2013映画祭で上映される、
原発災害によって故郷を破壊され、
それまでの平穏な生活を失いながらも
家族としての絆を再確認していく平田家四人を中心とした物語。
原発事故を題材にした映画、と聞くと、
短絡的に〃反原発映画〃として取り上げられてしまう側面もあるかもしれない。
しかし、本作に描かれていくのはあくまで〃人〃の姿。
もちろん、僕らは2年前の3月11日に起きた東日本大震災と、
その後の福島原発事故のことを忘れてはいない。
あの時の地震と津波だけの被害だったら、
現在の復興はもっと早く進んでいたに違いない。
そういう意味では福島原発事故は人災と言ってもいいかもしれないのだ。
映画では太田監督がチェルノブイリや、各原発問題、被災者たちの現状など、
綿密な取材によって構築された、原発事故の実情も描かれていく。
そして、その原発事故によって壊されていく、
被害を受けた場所に住んでいた人々の生活や心情の変化、
実害などがクロース・アップされる。
その描き方は、ある種冷徹でもある。
冷徹に描かなければならない理由。
そして、冷徹に描くことでしか立ち上がってこない本当の恐ろしさ。
目に見えない放射線という対処しようのない怪物。
そこに立ち向かうには、ただ自分の心でしかない現実。
映画は、いくつも露になってくる悲しみの放列の中で
「幸福とは何だったのか」
を鮮烈に問うてくる。
(つづく)
2013-05-30 08:04
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