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「フェイブルマンズ」スピルバーグの自伝的映画。感じることあった。 [映画業界物語]

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「フェイブルマンズ」スピルバーグの自伝的映画。感じることあった。

喘息が悪化する直前に観ることができた。スピルバーグ幼少時代は自伝でも読んでいたし、彼の映画にも何度も投影されていた。馴染みのあるエピソードが多い。「映画界で大成功した青年のサクセスストーリー」という見せ方もあっただろうが、ひたすら家庭内の不和を描き続ける。決して感動的なハートウォミング・ストーリーではない。

どこの家でもあるとも言える話でもあり、究極の不幸に襲われて家族バラバラに!という物語でもない。簡単にいうと母の浮気。それが家族に不協和音を起こしていく。映画ではよく究極の不幸や貧乏が描かれるが、こんな小さな家庭内トラブルでも、子ども達には大きな影響を与える。

もう一つがユダヤ人問題。スピルバーグという名前からしてユダヤ人。そのために受けた差別。日本人から見ると同じ白人だろ?と思えるのだが、その溝には長い長い歴史がある。そんなスピルバーグが子供時代に映画作りに興味を持ち、8ミリカメラを回し始める。

この辺は他人事ではない。僕は高校時代にカメラを持ち、高校の体育祭の記録映画を作った。その後、映画監督を目指し、横浜で自主映画活動をした。映画では分かりづらいが、スピルバーグは高校卒業後、カルフォルニア大学のロングビーチ校に入学。映画科ではなくテレビ&ラジオ学科。在学中に有名なユニバーサル・スタジオ潜入事件があり、20代にしてデビューすることになる。が、それは描かれない。

僕はそんなスピルバーグに憧れて、アメリカ留学。ルーカスの母校である南カルフォルニア大学の映画科へ。スピルバーグやルーカスが多額の寄付をしているところ。全米ナンバー1と言われるシネマスクール。奇跡的に合格した(ま、テストとかないし、英語力も問われない。ただ審査はあり、学期ごとに3人くらいしか合格できない)映画はスピルバーグが監督デビューするまでは描かず、あの人!と出会うところまで(ここが一番の見せ場!)

あれ、事実かな〜?聞いたことないし。でも、大林宣彦監督もあの人が憧れで、自伝的映画で彼と出会う場面を作っている。監督業は似たような発想!で、僕はというと、帰国後に十数年かかって監督デビュー。今、8作目の映画を編集中。スピルバーグのようなヒットメーカーにはなれていないが、好きな仕事をしている。

この映画で一番感銘を受けたのは「好きな仕事をすると必ず失うものがある」ということ。それを何人かの登場人物が口にする。まさに、その通り。安定した生活。愛する人との結婚。子どもたちがいる幸せな家庭。今時の日本の監督業では望めない。もちろん一部には全てを手に入れている人もいるが、その手の人は作品クオリティが次第に落ちて来ているように感じる。

愛する妻がいて、子ども達がいて、安定した生活。それを望むらなら映画ではなく、大手企業のサラリーマンを目指すべきなのだろう。ま、最近はその種の会社でも「安定」とは言えなくなってはいるが、監督業よりはマシだ。そんなことがなぜか?一番、心に刺さった。

一時期。僕を結婚させようと、いろんな人が暗躍?していたが、皆、失敗。まず、相手が嫌がる。そして今にして思えば、体壊して、喘息再発してまで映画を作る夫も父親も、家族は嫌だろう。そんな人たちの反対の中、仕事を続けるのは、更なるストレスが生まれる。だから「好きな仕事をすると必ず失うものがある」なのだ。

実際のスピルバーグはどうなんだろう?女優のケイト・キャンプシャーと結婚。5人ほど子供がいるはず。離婚したという話も聞かないし、失うものなく、栄光を掴んだのか?いやいや、きっと言えない大変な思いを家庭でしているような気がする。映画監督にまっとーな生活は難しい。



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