映画監督今昔物語?=昔は花形。今は貧困層? [映画業界物語]
映画監督今昔物語?=昔は花形。今は貧困層?
いよいよ明日が新作「乙女たちの沖縄戦」東京公開。初日舞台挨拶がある。俳優陣も登壇。華やかな1日となる。これまでの作品では常盤貴子さん。田中美里さん。藤田朋子さん。鈴木杏さんら、絢爛豪華な女優さんたちとも登壇した。「いいなあ〜」と思う人たちもいるが、監督業はそんな華やかな面ばかりではない。
今回の作品は宣伝費がほぼない!状態。その辺の話は以前に書いた。省庁の支援金で作った映画。沖縄戦題材の作品に大手映画会社や企業は出資しない。だから、非常に厳しい予算で制作。どうにか作り上げたが宣伝費がない。チラシとポスターだけで精一杯。チケットも印刷できない。だから、マスコミ関係に取材してもらい、記事にしてもらう方法で行く。新聞に広告を出すと高い広告料を払わねばならないが、取材して記事にしてもらうと、無料!その価値、費用対効果は何百万にもなる。
ただ、誰かが取材を受けねばならない。今回なら沖縄戦について語らなければならない。それができるのは今回のチームでは僕1人。まあ、前作から5年以上勉強を続けている。大丈夫なのだが、何社からも取材を受ける。指定された場所に行く。zoomで取材される。いずれにしても拘束される。数時間はかかる。直前まで他の仕事をしていて・・・という訳にはいかない。全力で話をしてこそ、良い記事にしてくれる。
さらに原稿依頼もある。インタビューの場合は活字に起こした原稿のチェツクをせねばならない。言ったことを文字にして間違いがあってはいけないからだ。ただ、それらの作業は全てノーギャラ。
宣伝費がないのだから、記事にしてくれるだけでも感謝なのだが、僕個人はそのために何日も稼働せねばならず、その日の収入はゼロとなる。舞台挨拶も同様。交通費もギャラも出ない。全て、監督が「1人で多くの人に見てほしい」という気持ちだけで対応している。僕だけではない。監督業なら皆、同じだ。
この1ヶ月。そんな日々を過ごす。収入にはならない上に、生活のための仕事を止める、休むということが続く。1日2日ではない。今回は違うが、これで大阪宣伝、地方での舞台挨拶があると、交通費と宿泊費は出るが、ノーギャラ。そんなで数ヶ月。毎回、映画公開時には無給で働く。文句を言っているのではない。これが映画界の慣習。そして監督たちは誰も不満を持たない。「皆で作った作品を見てほしい!」その一念。
だが、確実に生活は脅かされる。貯金がある監督なんて何人いるだろう?それどころか多くが借金を背負っている。スタッフは映画が終われば次の仕事。生活のために働けるが、監督はそうは行かない。中には「映画がヒットすると歩合がもらえるでしょう!頑張って〜」という人がいるが、もらえない。映画が何億稼ごうが監督には1円も入らない。だから、今の時代はスタッフの方が生活が安定する。昔は監督の方が儲かったのだが、今は逆。
それでも多くに映画を見てもらいたい。その想いだけで宣伝する。もし大ヒットすれば、「また監督依頼が来るかも?」という希望だけを抱き締めて宣伝。だが、僕の場合は毎回遺作。その作品が公開され、観客がエンディングで拍手してくれれば、そこで死んでいいと思ってやっている。でも、次回作が決まれば死ねない。本当の意味で遺作が来るまで何とか生きていれれば、それでいい。金持ちになりたければ監督業は選ばない。明日は舞台挨拶だ。多くの観客に来てほしい。
誤解されやすい仕事=映画監督?!=「愚痴をいうな!」「寄付をくれ〜」? [映画業界物語]
誤解されやすい仕事=映画監督?!=「愚痴をいうな!」「寄付をくれ〜」?
映画制作の苦労話を書くと「愚痴をいうな!」と言ってくる輩がいる。「苦労話」と「愚痴」の違いが分からない。さらにある種の日本人は苦労を見せずに頑張るという姿が好きなようだ。
ただ、苦労話を書かず良いことばかり書いていると、無神経な想像をしてあれこれ頼み事をしてくる輩がいる。「映画監督は金持ち!」と思い込み「私たちの団体に寄付してください」「**市に来てトークしてください(ギャラなし。交通費自腹で)」との連絡。日本の映画監督80%が貧乏と言っていい現実を知らず、ハリウッド監督をダブらせて、あれこれ要望してくる。ありもしないことを妄想。あるいは、僕がやってもいない、言ってもないことを批判してくる。「どうーせ。監督なんて」「女優と毎晩、飲み歩いてるはず!」という思い込みでそんな罵詈雑言が出てくる。
その辺はもう無視するしかないが、苦労話は大事。僕も巨匠監督の苦労話からいろんなことを学んだ。成功した話より、その手の話の方が勉強になる。また、関西人は自慢話より、苦労話をおもしろ可笑しくするのが好きなところがある。関西育ちの私は似たようなところがあるだろう。だから、その手の話をよく書く。
けど、気になるのが、応援してくれる人が誤解してあれこれ注意してくること。親切心からなのだが、誤解に基づいた注意。指摘。それをいちいち訂正するのもどうか? 時間も取られる。手間もかかる。その種の人に説明すると、さらに誤解して「失望したよ!」とブロックされる。芸能関係の職業に対する先入観や思い込みが強く、悲しい結末になることもある。そんなこともあるので、日頃から苦労話。舞台裏の話はよく記事にする。映画監督の実態を書く。そんな話の一つをこの後、紹介する。
舞台挨拶2連発!ー太田隆文監督@東京写真美術館・8月2日(火)沖縄戦シリーズ2本 [乙女たちの沖縄戦]
昨夜のNHK。沖縄戦の特集。「ちむどんどん」スペシャル?あれがテレビの限界か! [乙女たちの沖縄戦]
昨夜のNHK。沖縄戦の特集。「ちむどんどん」スペシャル?あれがテレビの限界か!
沖縄戦がどれほど過酷で凄惨であったか?具体的に紹介しない!「戦争はいけない」「命は大切だ」何度も出演者たちが繰り返すが、そんなことは当たり前だ!その戦争はどんな風であったのか?なぜ、戦争が起こったのか?誰に責任があるのか? 具体的に説明しない。
目を覆う言葉にも出来ない現実の連続であったこと。アメリカ軍がどんなことをしたか?味方である日本軍兵士が住民に何をしたか?さらには沖縄の親たちが子供を殺されなばならなかった現実とは?そして沖縄は本土を守るために捨て石にされたこと!
その辺には一切触れないNHK。アメリカの、日本軍の罪を問わずに「戦争はいけない」を繰り返す国営放送。沖縄戦の現実はテレビでは放送できないということだ。その絶対に描けない戦争の現実。映画で伝えます。
「ドキュメンタリー沖縄戦」(再公開)「乙女たちの沖縄戦」本日、東京公開@東京写真美術館・恵比寿。舞台挨拶あり。
①「ドキュメンタリー沖縄戦」(再上映)
13時の回後ー舞台挨拶 登壇 太田隆文監督
②「乙女たちの沖縄戦」(新作)
15:30の回後ー舞台挨拶
登壇 森田朋依、永井ゆみ、城之内正明、藤真由美、松村克弥監督、太田隆文監督