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映画監督という生き方? 「人並みな生活がしたい!」と思ったらアウト? [映画業界物語]

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映画監督という生き方? 「人並みな生活がしたい!」と思ったらアウト?

映画監督というと、多くの人は文化人、芸術家。金持ち。女優にモテる?とか思うようだが、かなり違う。もちろん、巨匠と呼ばれる人は文化人であり、芸術家なのだが、多くの監督は単なる現場仕切りの仕事であったりする。

監督で金持ちはほんの一握り。ほとんどが貧乏人といえる状態。新入社員より年収が低いだろう。ただ、熱い思いを持つ人が多く「俺はこれを描きたい!」ということで自分を支えて映画作りに励んでいる。とは言え、低予算でも1本の映画を撮るだけでも、本当に大変なこと。チャンスを掴むだけで宝くじに当たるようなもの。なのに、終わると残るのは借金だけ!ということが多い。

ある意味で劇団で頑張る俳優のようなもので、テレビにも出れない。食えない。アルバイトの毎日。でも、芝居が好きで続けている!というような感じだ。監督業も映画だけでは食えない。あれこれ他の仕事もする。AVに誘われて、そのまま帰って来ない監督も多い。監督作品は1本だけで、その後の十数年、1本も撮っておらず。それでも「監督!」と呼ばれている人もいる。

いや、1本すら監督していない監督もいる。撮り続けるのも大変。ヒットさせるのはまず無理。そして監督できても、自分が好きな作品なんてまず撮れない。企業映画だと「なんじゃこれー」というシナリオを渡されて撮影。評判が悪いと「あいつはダメだな」と烙印。好きでもない作品を撮ってもいいものは出来ない。

本当に自分が撮りたいものを撮れるのは、奇跡を願うようなもの。企業ではバカが寄ってたかって作品をダメにする。ただ、そんな魑魅魍魎たちに言われた通りの、ありきたりの作品を撮らないと、次の仕事ももらえない。映画が撮りたくて入った世界。監督業を続けるには「撮りたくないもの」を撮らねばならず。自分がやりたいもの!なんて、誰も金を出してくれない。それが監督業の現実だ。

そんな中で僕は「自分が撮りたいものしか撮らない!」と決めた。そんな子供のワガママが通用する世界ではない。が、儲けようとか、また仕事をもらおうとか、まともな生活をしょうとか、人並みな幸せを得たいとか思わなければ、できるものだ。ここまで5本の長編映画。2本の長編ドキュメンタリーを監督した。全部、自分がやりたい作品だ。

依頼された作品もあるが、全て「やりたい!」と思ったもの。ただ、やりたいものをやると、結局、人並みな生活は出来ない。結婚も出来ない。家庭も築けない。老後の貯金もない。いつか野垂れ死する覚悟がいる。貯金も出来ない。来月の家賃が払えない!は何度もある。友人たちには迷惑をかける。女優にモテることもなく、フリーターと変わらない、むしろそれ以下の生活水準。

それでも「撮りたい作品を撮る!」ことは意味を感じる。嫌な作品を撮り経済的に恵まれた生活をするか? 撮りたい作品を撮り貧しい生活をするか?どちらがいいのか? いつ、アパートで孤独死してもいいと思えば、それはそれで楽しい生活だ。そこまで覚悟したら「撮りたいものが撮れる」と僕は考える。

長生きしたいとは思わない。だから、毎回「遺作」。これで死んでもいいと思っている。製作中は何ヶ月も血圧が危険値を超える。医者には「休み取りなさい。でないと本当に過労死するよ!」と毎回言われる。完成すると毎回、倒れ、数ヶ月間寝込む。だが、それで死ねなければ「もう1本撮れ!」と映画の神様が言っているのだ。そしてまた次の戦い。だが、60代になり戦いも辛くなる。終わりが来るまで、その繰り返しだ。



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