「踊る!大捜査線」映画版「レインボーブリッジを封鎖しろ」について② 20年前の映画に今の日本がある!小池知事がダブるキャラも? [映画感想]
「踊る!大捜査線」映画版「レインボーブリッジを封鎖しろ」について②
=20年前の映画に今の日本がある!小池知事がダブるキャラも?
テーマに関する感想は昨日書いた。が、他にも紹介した側面がある。昔の刑事物は「刑事」vs「犯人」だった。正義の刑事が凶悪な犯罪者を追う話。だが、このドラマは「現場刑事」vs「上層部」と言う構図。犯罪を追うのに上層部がバカで邪魔をすると言うもの。
昔のドラマなら、そんな時には二谷英明の課長や裕次郎が体を張って圧力を拒否して現場を優先させるのだが、「踊る」の湾岸署では署長以下のトップ3人は上にゴマをするだけの存在。劇中ではコメディリリーフとして登場する。代わって現場を守ろうとするのが、柳葉敏郎扮する室井管理官。
管理官という存在を登場させたことが、このドラマを現代的にしている。昔の刑事物は全ての事件を所轄署が担当する「太陽にほえろ」では七曲署。だが、「踊る」では殺人事件の場合は所轄署ではなく、本庁から管理官が送り込まれ、所轄署の警官は下働き的な存在となる。情報は全て上だけで把握。現場刑事たちは目的も分からず、聞き込みや警備に当たらされる。昔のドラマならトップに二谷英明や裕次郎がいて、部下はみんないい奴で、チームワークで事件を解決した。
それが「踊る」では所轄署のトップは何の権限もなく、本庁から来た管理官が頭ごなしに命令。刑事たちは不満を抱えながら捜査すると言う構図なのだ。今の日本では警察機構だけでなく、大手企業ならどこでも似たようなことが行われているだろう。「こんなもの売れるの?」と言う新製品を開発。売って来いと言われる。世間の需要に応えていない物が売れるわけないが「それを売るのが仕事だ」と理不尽に言われる。
「踊る」でもそうだが、上層部は事件解決より、自分の経歴に傷がつかないか?外部からクレームが来ないか?トップの心象を悪くしないか?そして無意味なエリート意識を守ろうとする。その日本人の考え方がバブル崩壊を招き、20年を超える不況を呼び起こしたのだと思える。世界のメイドインジャパンーと呼ばれて自惚れた結果がそれ。その背景になったが、上層部が全てを決める企業システムだと思える。
だからこそ、「踊る」には多くの人が共感した。刑事vs犯人と言う古いスタイルのファン以外の人も飛びついた。さらに「レインボーブリッジ」で興味深いのは、事件を仕切る本部長として女性管理官(真矢みき)が登場する。本庁が女性が活躍する職場ということでアピールするための起用。今回の事件にふさわしいということではない。だが、彼女は自分のプライド、イメージ作りにばかりこだわり、逆らう者はすぐに排除。権力を振りかざす。めっちゃ嫌な奴。おまけに無能で何をやっても失敗ばかり。
ん?何か聞いたことある話だな? そう、このドラマより約20年後に湾岸署ではなく、都庁にやってきた小池百合子知事を彷彿とさせる。それだけに憎々しさが倍増。理不尽を押し付けられる織田裕二演じる青島刑事たちの憤りが自分のことのように思える。そして、最後に立ち上がる室井管理官(柳葉敏郎)はもう拍手喝采だ。応援せずにいられない。「室井さん。ありがとう!」という感じ。彼はいう。「捜査員は自分の判断で行動しろ」ー涙が溢れた。
ドラマに感動しただけではなく、まさに今の時代に必要な言葉だからだ。マスコミが567の恐怖を煽り、枠てんに誘導。多くが殺到する。危険を感じているからこそFBで「40時間過ぎても何もなし。勝利」とかバカな文章をアップする。テレビで毎日、五輪を放送すれば「感動もらった。励まされた」と喜ぶ。競技にかかった金は税金なんだよ?それを感染対策や病床確保に使えるのに、多くの国民は大喜び。
上から与えられると疑問も持たず、乗せられ行動してしまう。それがどれだけ自分たちの首を締めていることになるのか? 「踊る」の中で青島刑事たちはまだ理不尽を感じ、抵抗しながら従う。が、今の日本人は完全に乗せられ、理不尽にさえ気づいていない人が多い。ほぼ奴隷状態。すぐに枠てん打ち、五輪に感動できる。だからこそ思う。室井さんの言葉「自分の判断で行動しろ!」これほど今の日本人に必要なものはないだろう。
映画にはもう一つのテーマがある。それを伝えるのは青島刑事だ。「俺たちは組織の中で働いている。でもなあ、上にできる奴がいると強い力になるんだよ」室井管理官のことだ。そう、上がバカだから刑事たちは理不尽を感じる。小池がバカだから都民が困る。上に行くのはプライドやイメージを気にするだけのエリートではなく、現場を知っている人間が行くべき。それがこの映画のもう一つのテーマだろう。それもまさに今の日本。菅、小池、安倍、まさに「踊る」のトップと同じ。
2003年公開の映画にまさか、今の日本が描かれているとは思わなかった。Netflixで見られるので、チャンスあればぜひ見て欲しい。