人との距離の取り方。感謝の気持ちが恨みを買う?=ミック・ジャガーから学ぶ対人関係 [【再掲載】]
人との距離の取り方。感謝の気持ちが恨みを買う?=ミック・ジャガーから学ぶ対人関係
学生時代。音楽雑誌とかを読んでいると、デビッド・ボウイも、プリンスも、ミック・ジャガーも仕事以外で人前には現れず、コンサート時にしかマスコミのインタビューも受けないという話が載っていた。マスコミやファンにプライベートが阻害されるので人前に出ないのだ。
日本の矢沢永吉も週刊誌に山中湖の家を激写されたことで、連日ファンが集まった。家族は外にも出られない。妻はノイローゼ。結局、数億の豪邸には1年ほどしか住まずに引っ越し。有名人ならでは苦悩がある。
だが、それは有名人だけではない。僕のような映画監督レベルでも近いことがある。通常監督は撮影後にロケ地で挨拶回りはしない。製作担当が回るのが慣習。でも、感謝の気持ちを伝えたくて同行していた。懐中電灯1個借りても挨拶に行った。が、次に街を訪れた時には打ち合わせをする主要メンバーのみに会う。すると、懐中電灯の方が「何でウチに挨拶に来ない!」と激怒したという。
常識で考えれば、何度も挨拶に行くケースではない。でも、その人は「監督がわざわざ挨拶に来てくれた。感動した。懐中電灯1個なのにいい人だ。これからも応援しよう!」と思ってくれた。親しい友人のように感じたという。なのに次は訪ねて来ない。「裏切られた!」「利用された!」「騙された!」その方は本来、とてもいい人。感受性豊かであり、芸術を理解する。でも、思い込みが強いので「親しい友人」と考えてしまった。そして「裏切られた」と思ってしまった。
残念なことだ。ただ、その人を批判したくない。悪意ではなく好意だったのだ。ではどうすればよかったのか? 挨拶に行くべきではなかったのだ。そのことがきっかけで起こったトラブル。その時は喜んでくれても、過剰に期待されたり、勘違いが起こったりするのなら、行くべきではない。だから映画界では監督が挨拶回りをしない慣習ができたのかもしれない。似たようなことは何度もあった。その度に悪意のない人が傷ついたり、いわれもないことで批判されたり。周りにも迷惑をかけた。
ミックやボウイ。そして矢沢もレベルは違えど、誰かと関わることで似たようなことがあり、やがて人前に出なくなったのだろう。ファンが喜んでくれるからと思っても、結果トラブルになったり、誰かが嫌な思いをする。芸能人は孤独というが、孤独でいないと迷惑をかけるということ。
芸能人だけでなく、一般でも言えることだ。若い女性がどこかの飲み会で男性に親切にする。その男は自分に気があると思い、その子を追い回す。ストーカーのようになるかもしれない。同情してある人の悩みを聞く。「親切な人だ」と、その後、何かあると電話して来られて、どうでもいい話を長時間される。電話を切ろうとすると、「裏切られた」と言われるかもしれない。良かれと思ったことで悩まされることになる。誰も悪くないのに、困ったことになる。人との距離の置き方。ミックに学ぶ必要がある。