映画「島守の塔」=「戦争推進の知事」を脚色して「住民を救った偉人」に?(再掲載) [映画感想]
映画「島守の塔」=「戦争推進の知事」を脚色して「住民を救った偉人」に?(再掲載)
10万人を超える命を住民を救った「偉人」ーと、この映画は描く。まるで日本のシンドラーのような作品だが、かなり現実とは違う。フィクションを加えて映画を作る。劇映画では特別なことではない。が、この作品の場合。沖縄側の立場を考えるべきではなかったか? 主人公となる島田叡知事(演じるは萩原聖人)、荒井警察部長(演じるは村上淳)。本当はどんな人だったのか?
沖縄戦研究の第一人者が地元紙で解説している。=この映画のテーマとなる部分。核となるのは島田と荒井が「どんなことがあっても県民を守り抜くぞ!」と誓い合う場面。そこから彼らは住民を救うための努力と葛藤が続く=が、これは事実ではない。むしろ反対の行動をしていることが分かるという。
実際はこう「島田と荒井の住民保護は老人、婦女子に限られており青少年らが疎開を行おうとすれば、戦線離脱であり厳重取り締まりを要するーと警告を発している。また、疎開地では避難民を米軍に投降させないために。塩谷警察署を新たに設置、避難民の戦意高揚と彼らの監視強化を計った」
これは明らかに国の指示に忠実に従っただけ。県民を守るというより。管理し、国に従わせるという行為。偉人の行為とは思えない。専門家はこう結論づける「2人の本質は国体を守ることを前提とした住民保護だった」
映画の中で島田と荒井が雨の中、自ら住民を誘導する場面がある。2人の熱い思いが伝わる。だが、その記録はない。映画の創作。そのことで彼らは体を張って県民を守ろうとしたという思いが観客に印象付けられる。実際にはしていない感動的な行動の創作、彼らを偉人にするための手法である。
また、32軍の沖縄を捨て石にするという作戦。島田たちは知らなかったという場面もあるが、専門家はそれも疑問視。立場的に知らない訳がない。だが、知らないということにしなければ「住民を守る!」という思い、映画のテーマが成り立たない。本当に島田たちが「県民を救う」という強い思いがあれば、国や軍と正面衝突。左遷されるだろう。
そうはなってない。彼らは国の指示に従い行動していたから。だが、それでは物語が成り立たない。そこで映画では知らなかったことにした。「偉人にするための巧妙な脚色がある」と専門家は指摘している。
他にも、島田知事は少年兵である鉄血勤皇隊を作り、軍に協力させる案にゴーサインを出している。そのことで多くの少年兵が戦闘に巻き込まれ犠牲となっている。
映画では「住民を守り抜く」と誓った知事が少年たちを死に追い遣っている。そちらが事実だが、一切映画では描かれていない。これはフィクション!と謳えばまだ許される。が、この映画。全てが事実であるように宣伝。パンフ、チラシにも一切フィクションであるとは書いていない。
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