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「乙女たちの沖縄戦」へのコメント⑥ 「ドキュメンタリーパートに女優が出る意味ない!」と批判する男性。ふふふ、そこを解説。 [乙女たちの沖縄戦]

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「乙女たちの沖縄戦」へのコメント⑥ 「ドキュメンタリーパートに女優が出る意味ない!」と批判する男性。ふふふ、そこを解説。

こんなコメントを見つけた。「この映画はドキュメンタリーパートとドラマパートに分かれているが、ドラマパートで女子学徒を演じる女優がドキュメンタリーパートで戦争体験者にインタビューしている。何で若い女性なの? 質問者はいなくていいんじゃないかなあ?意味ないし、何のプラスにもなっていない!」

これも解説する。映画というのは多くの人が見る。ただ、ドキュメンタリーは劇映画より観たいと思う層が限定される。「トップガン」であれば娯楽を求める多くの人が見に行くが「沖縄戦」となると関心がある人が中心となる。

作り手も往々にして題材をマニアックに描き、より深く掘り下げようとしがち。観る方も作る方もマニアックになることが多い。ドキュメンタリーものを見るとき、特に僕が感じるのは作り手にこんな思いがあること。

「退屈でもこれは大切なことだから、我慢して最後まで見なければなりません!」

まるで学校の先生!だから「あードキュメンタリーは退屈。もう見ない〜!」と思ってしまう。もちろん、近年はハラハラドキドキする面白いドキュメンタリー映画が増えたが、退屈なものも数多く存在する。そこで考えた。

僕はもともと劇映画、それも青春映画が得意な監督。劇映画で観客に我慢を強いる発想はない。観客が退屈した段階で作り手の負け! と言って真面目な題材を笑いにしたり、歪めてはいけない。

白梅学徒は当時17歳だった少女たち。ならばその作品の案内人もこの間まで高校生だった女の子にしよう!現代を生きる若い女性x戦中を生きた女性という構図で描くことで、単に戦争体験を紹介するだけでない何かが生まれてくるはず。質問する20代の若い女の子。答える92歳の女性。合わせ鏡になっている。それを観客が見るだけでもいろんなことを思うだろう。

また、この種のドキュメンタリーは高齢の男性が観ることが多い。特に戦争ものは顕著。女性にも見てもらうにはどうすればいいか? そこで女性視点で制作。20代の女性の視点で沖縄に行き、体験者を探し、話を聞く。そのまま過去の戦時中の物語に入って行く。女性が観やすくなる。映画を見るときに人は、自分に近い年齢、同じ性別の登場人物に感情移入する。

その意味でこの映画を若い女性。そして高齢の女性は、よくある三人称で描かれるドキュメンタリー(NHKスペシャル等がそのスタイル)より観やすくなり、より内容を身近に感じるはず。

一方、男性は若い女性に対して好感を持つ。案内人が女性でも問題がない。もし、その役割をジャニーズ系のカッコいい男の子が担っていたら、内容以前に拒否感を持つだろう。その意味でも女性なら大丈夫。

この映画と同じようなスタイルで番組作りをしているのが、NEWS23のあれ。終戦記念日近くになると、綾瀬はるかが広島の被爆者を訪ねるコーナーが放送される。これも怖い顔をしたキャスターや男性記者より、有名な女優が案内をすることで、主婦層や若い女性も観やすくなるという効果を考えている。

また、90代の体験者に中年の強面男性がインタビューするよりも、若い女性が質問する方が優しく答えてくれるというのもある。男性キャスターや女性アナウンサーであった場合。何も知らないと体験者側も「取材に来たのに不勉強ね〜」と不安になる。あるいは不満を感じる。

が、何も知らない若い女優であれば、1から丁寧に教えてあげようと思ってくれる。実際、映画を見ると先生が生徒に教えるように分かりやすく体験を話してくれている。

あるいはイカツイ男性や文句の多そうな記者が質問すると、体験者が萎縮して答えがぎこちなくなることもある。政治家相手や犯罪者ならその種の人が必要だかが、高齢の女性に不安感を持たすようなインタビューは相応しくない。その意味で20代の女優というのは大きな意味がある。ここでもう一度、コメントを思い出してみよう。

「何で若い女性なの? 質問者はいなくていいんじゃないかなあ? 意味ないし、何のプラスにもなっていない!」

ーさあ、どうだろう。この指摘が全く当たっていないことが分かってもらえたと思う。一般のお客さんなので映画の作り方、見せ方まではご存じないというのもある。ただ、体験者の丁寧な分かりやすい語りは若き女優が質問したからこそであり、コメント主が気づかないプラスになっている。

他にも三人称で描くと、作品自体が重くなるというマイナスもあるので、その点でも女性視点はプラス。「乙女たち」は女性にとても評判がいい。前作以上に女性からのコメントが評価が高い。それも女性視点で描かれたことで、より分かりやすく女性体験者の思いが伝わったからだと感じている。

映画というのは観客が気づかない方法論であれこれ考えて作られている。ドキュメンタリーとはいえ、退屈なものを観客に我慢を強いるのは僕としては許せない。そんな思いで作っている。


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