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本当に過酷な状態で作り上げた「乙女たちの沖縄戦」 [乙女たちの沖縄戦]

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本当に過酷な状態で作り上げた「乙女たちの沖縄戦」

[新月]本当に過酷な状態で作り上げた「乙女たちの沖縄戦」

あれこれ問い合わせが続くので、もう少し詳しく書いておく。8月に公開される僕の新作映画「乙女たちの沖縄戦」は沖縄シリーズ第2弾とでもいうべきもの。前作「ドキュメンタリー沖縄戦」の続編的な作品。今回は白梅学徒の話に絞って、ドキュメンタリーだけでなく再現ドラマでも描いている。

内容的にはかなり潤沢なものになっているが、製作経緯は本当に大変だった。まず、昨年12月に製作プロダクションから連絡。「白梅学徒のドキュメンタリー映画を作ってほしい」との依頼。これは嬉しい。前作で唯一取材できなかったのが白梅。関係者とお会いしていたがスケジュールの都合でインタビューできなかった。が、プロダクションの担当者は言う「来週から沖縄に行き、年内に再現ドラマ部分のシナリオを上げてほしい」何ーー!

そして製作費を聞いてさらに仰天。通常のドキュメンタリー映画を作る半分以下の額。それもほとんどがドラマ編に使われ、ドキュメンタリーパートは本当に僅か。ギャラも信じられない額。撮影中の食費も毎日牛丼食べろいうようなもの。さらに編集費が出ない。ドキュメンタリー編集は数ヶ月かかる。結局、3ヶ月無給で作業。「いい加減にしろ!」と言いたくなるが、それは言わない。

沖縄戦のドキュメンタリー映画。映画会社や企業は絶対に出資しない。僕の前作も業界ではないところからの依頼。そして様々なトラブルがあった。劇場公開もDVD発売も最初はなかった。会社や組織の多くは沖縄戦を多くに伝えようとは思っていない。むしろ隠したい。葬りたいという勢力さえ存在する。あまりにも酷い歴史の1p。戦争をしたい人たちには都合が悪い。映画でも「ひめゆりの塔」と「沖縄決戦」くらいしか知名度のある映画はない。

その意味で今回の依頼は奇跡。背景はいろいろあるが、一言でいうと文科省の支援プログラム。そんなことでもないと白梅学徒の映画を作ることなんて出来なかっただろう。だから、製作費がどんなに安くても、何ヶ月もタダ働きしても、やらねばならない仕事だ。

「ひめゆり」は知っていても、「白梅」を知る人は少ない。「白梅」を伝えることで「ひめゆり」が特別な存在ではなく、沖縄戦では多くの若者が動員され犠牲になっていたことを知ってもらえる。また、健在でお話を伺える元白梅学徒はもうお二人しかいない。10年後に予算が集まっても、お話は聞けないかもしれない。お元気だとしても、もう100歳。時間は今しかない。

だから、全力でかかった。いつも以上にきつい状態。その上、時間制約がある。みんな頑張った。どうにか完成。出来は良かった。が、問題はあった。宣伝費だ。ほとんどないと言っていい状態。僕がデザイン、構成、文章も担当。ノーギャラでチラシとポスターはどうにか作った。が、試写会ができない。前売り券も印刷する余裕がない。パンフも無理。舞台挨拶も関係者が自腹で交通費を払って集まることができる東京周辺だけとなる。

テレビCMや新聞広告は夢のまた夢。でも、マスコミ関係で興味を持ってくれた社もある。ただ、今回の関係者で沖縄戦について語れる者は少ない。だから、僕がほとんどを引き受ける。3ヶ月の無料奉仕の後で、取材に答える。もちろんギャラは出ない。1日1社の取材でも、その時間に指定された場所に行く。生活のための仕事が止まる。そんな取材がすでに7件。本当はありがたい。でも、そもそも今回のギャラも信じられない額。完成までに生活できない。皆、それでも全力でかかった。

文句を言っているのではない。例えボランティアだったとしても沖縄戦の、それも白梅学徒を映画で紹介できるのは奇跡。今回の機会がなければ「白梅」を紹介する映画はできなかったかもしれない。沖縄戦の悲劇の一面を多くに伝えることを不可能にしたかもしれない。スタッフ、キャスト皆、僅かな収入で本当に頑張った。みんなの情熱で完成した映画だ。完成しただけで奇跡。

「**市で舞台挨拶をしてください」などというコメントはご遠慮願いたい。言ってくれるのはありがたいが、これ以上、会社にも、関係者にも限界。もう一度、言う。完成できただけで奇跡。公開できるだけで驚きなのだ。その上に舞台挨拶を遠方で!は不可能。気持ちはありがたいが、そういう作品なのだ。

本来、こんなこと書くべきことではないが、そんな経緯があることをあえて伝える。でも、作品は10年、20年、30年、いや100年先まで残る。関係者の苦労は無駄にならない。本来、その種の事業は大手企業や映画会社が率先してやるべき。でも、やらない。だから僕らが身を削りやっている。ぜひ、見てほしい。これが戦争。これが沖縄戦。8月2日(火)東京公開。


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