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ある事件で知った「時代は変わる」ということ②=大きなチャンスから奈落の底へ? [日本人の問題]

ある事件で知った「時代は変わる」ということ②=大きなチャンスから奈落の底へ?

アメリカ留学から帰国後。1990年代。僕は新宿まで歩いて30分の街に住んでいた。と言っても決して都会ではない。高層ビルもない。よくある駅前商店街がある街。家賃もさほど高くない。新宿での飲み会で終電を逃しても歩いて帰れる。先輩から連絡を貰えば、すぐに会社に駆け付けられる。歌舞伎町の映画館街にも歩いて行ける。オールナイトもOK。そんな街に住んでいた。

帰国から5年で脚本家デビュー。7年で監督デビュー。だが、映画監督になるのは15年かかった。そこからが本当の戦いで16年間、ノンストップ。決して恵まれた仕事ばかりではない。僕をよく知るスタッフは「太田監督は毎回、死闘ですからね?」と言う。それでも続けて映画を撮ることができた。

ある時、依頼されていた映画。これまでで最高額の製作費が出る。出来が良ければ毎年とってほしいとも言われた。そのためにアパートを引っ越し。というのも、僕の映画は既成の製作会社を入れない。多額の手数料を抜くから。スタッフルームも借りない。レンタル料がかかる。だから、スタッフとの打ち合わせは、喫茶店やファミレス。これで経費削減。でも、次はでかい作品なので、部屋で会議ができるくらいのアパートに変わった。と言っても6人くらいの会議だけど。喫茶店[喫茶店]?代節約?

また、これまでの映画の資料が膨大にあるので書庫を作らないと、倉庫に住んでいるような状態。編集室も作りたかった。毎回編集は3ヶ月以上かかる。機材を置き、データを並べ、いちいち片付けて、そのテーブルで飯を食わずに済む、専用スペースが欲しかった。大きな作品で監督料もドカンと入るし、広いへやに引っ越しだ。費用も抑えられるよう近所で探して移った。

が、その依頼された映画がキャンセル。衝撃!!! 1年以上もスケジュールを開けている。急に他の仕事はできない。特に監督業は「では、他の作品!」とは行かない。新しい部屋の家賃は高額。払う当てもない。バイトで払える額じゃない!目の前真っ暗。どーすりゃいいの?

ただ、その会社にも事情があり、どうしても映画製作ができなくなったという。それを丁寧に説明され、キャンセル料も出してくれた。この種の事件。多くの会社や団体は投げ出したまま説明もなく、逃げ回ることが多い。悪質なところが多いのだが、その会社は筋をとおしてくれたし、事情も理解できるものだった。幸い、スタッフやキャストも集めていない段階。

問題はアパート。2DKの広い部屋。新宿まで歩いて30分。家賃はそれなりだ。それ以前に収入が完全にない。どーすればいい? また引っ越すか? あれこれ考えていて、この20年考えたことのなかった現実に、気づくことになる。そう「時代は変わる」日本の価値観は劇的に変化していたのだ。

続く


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