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「みんなの意見を聞く」というと聞こえがいいが、実はトラブルのもと?=映画製作で考える民主的という勘違い? [社会政治]

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「みんなの意見を聞く」というと聞こえがいいが、実はトラブルのもと?=映画製作で考える民主的という勘違い?

FacebookやTwitterを見ていると「公開でやれ!」「ブラックボックスで決めるな」「みんなの意見を聞け」とかいうものをよく見かける。一見すると「その通りだ」「民主的だ」「公平だ」と賛同したくなる。が、本当にそうだろうか? それは時と場合によるし、それでは機能しないことがあるのではないか?

例えば映画。僕の場合、地方での製作が多い。ある街の場合。地元有志が実行委員会を立ち上げた。20人が委員となり決める。その他に実行部隊が40人。それが地元の製作母体となり寄付を集めたり、撮影協力をする。全員がプロでない一般の方々。議員さんも入っていない。彼ら彼女らが準備。実にうまくいった。ある時、なぜ、20人が委員で、40人が実行部隊なのか?聞いてみた。

「映画を作ろう!と最初に集まったのが20人。そのあと参加した人たち40人が実行部隊としました。委員会は20人だけにして、決まったことを40人に伝えて全体で動くというやり方。中には実行部隊の意見を聞いて、一緒に会議した方がいいという意見もありましたが、もし60人で会議をしたら、なかなか決めることができない。だから委員は20人までにしたんです」

大正解だ。「不公平だ」「民主的でない」「みんなで決めた方がいい」という人もいるかもしれないが、それでは機能しないことが多いのだ。どこの街でもそうだが、本当に映画ができるかどうか?分からない段階で手を挙げた人は責任感が強いし、映画についての知識を持っていることが多い。勉強もする。対して、映画製作が決まってから参加した人の中には「面白そうだ」「女優さんと会える[黒ハート]」「なんか儲かるかも!」という思いの人も混じってくる。

ある監督のケースだが、地元委員会が100人近くになったことがある。民主的に決めようと、毎回100人が集まり議論した。「主演は吉永小百合だ」「高倉健だ」「綺麗どころをズラーと揃えよう!」と言い出した人たちがいた。その映画の製作費ではとても出演してもらえるレベルの俳優ではない。が、彼らにギャラのことは分からない。「この町に健さん来たらいいよな?」というだけの発想。さらに「俺の店で撮影をしてほしい」「女優さんはうちの家に泊めたい」とか、主張する人たちも出てくる。

寄付を集めて製作という作品なのに「えー寄付集めるの?」「俺はやだなあ」「どっかテレビ局から金出ないの?」とか根本を覆すことを言い出す。「映画撮影。面白そー!」というだけで集まった人たちはそうなる。映画作りという現実を把握できず、夢や希望を語るばかり。最後は責任を取るという覚悟もないのに、あれこれ意見を言いたがる。

映画関係者ではないとは言え、あまりにも知識のない人たちが集まると、できないことを、あーでもない。こーでもないと言うばかりになり、何も決まらない。何も推進できないと言うことになる。事実、その監督の映画は製作中止になった。その意味で僕が映画を撮った先の街の人たちは非常に優秀。40人の実行部隊が委員会に出られないとことを批判する声も上がっただろうが、20人がしっかりと勉強。夢を語るだけでなく、現実と向かい合い、映画製作を成し遂げた。

もし、それを一部の人が「公開でやれ!」「ブラックボックスで決めるな!」「みんなの意見を聞け!」と言い出したら、「それもそうだな」と思えるかもしれないが、まず崩壊しただろう。実際、先の監督の時は地元がそれを実践してこんな声まで上がった。「シナリオを描きなおせ」「もっと面白い話にしろ」「監督が頼りないから変えろ」「黒澤明を呼べ!」「いや、ハリウッドからスピルバーグを呼ぼう!」「だったら主演はジョン・ウェインだ」

「もう死んでるだろ!」と言いたくなるが、何も知らない人たちが好き勝手言うだけになった。そこは多くの日本人が聞いたことのない田舎町であり、予定した製作が集まるか?不安な状況。なのにプライドは高い。できもしないことを提案する。それを街の実力者、顔役、地元の大手企業、商工会の役員というメンバーが集まり話し合ったというので呆れるしかない。

それが「公開でやる!」「みんなの意見を聞く」ということなのだろうか? 実現できないことを好き勝手言ってるだけではないか? 最近も、ある政党に対して、似たようなことを言う人たちがいるが、支持者や関係者全員が集まり、それをYouTubeで公開して多くの意見を聞くべきだと言うが、そこにどんな意味があるのか? 映画製作でも、一般の人が聞くと「えーそれダメでしょう?」と思えることでも、映画界では常識ということが多い。

それをいちいち説明していては会議にならないし、誤解して批判する人が続出すると、その対応で余計な時間が必要だ。他業の人と映像プロジェクトをすると、そのことで良く揉め、トラブルとなる。何も知らないのに自分たちの世界の価値観で批判を始めるからだ。同じことが言えるのではないか? 「みんなの意見を聞く」というと、とても民主的で公平に聞こえるが、そうでもないことも多いこと。考えたい。


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