ジャーナリストは現実を把握しているか? 時には映画や漫画のクリエーターが現実を見抜くこともある [社会政治]
ジャーナリストは現実を把握しているか? 時には映画や漫画のクリエーターが現実を見抜くこともある
1990年代前半。僕はアルバイトをしながらシナリオを書いていた。ある企業が隠れて秘密兵器を開発しているという物語。それを知った主人公が事件に巻き込まれるというもの。ま、映画や漫画の世界ではよくタイプの1本。そのストーリーを当時、大手テレビ局報道部で仕事をしていたベテラン記者に話した。
「そんなことはあり得ないよ。企業というのは必ず派閥があり、一方が武器を作れば、もう一方が告発して潰すんだよ」
なるほど、企業とはそういうところなのだろう。もう一人。有名出版社の編集者に見てもらった。
「リアリティがないんだよ。日本では武器の開発は違法。そんなことをすれば必ずバレる。狭い国だからね。いくら映画でも、もっとリアリティある話を作らないと」
両者から全否定された。が、本当にそうだろうか? 日本では密かに秘密兵器を開発したり、武器を持ったり出来ないのか? と思ったが、いろんな現実を見てきた人たちが「あり得ない」というのだから、やはり無理な設定なのではなのか...と考えた。
それから数年後。オウム真理教による地下鉄サリン事件が起きた。それからの報道は映画を超えていた。サリンだけではない。ソ連製のAK。軍用ヘリコプター。ボツリヌス菌。VXガスまで開発。アルマゲドンを計画していた。以前から怪しまれていた団体だが、そこまでとは!映画監督を目指していた僕も驚愕した。
思い出したのは数年前のあれ。「日本で武器を開発するなんてあり得ない」と大手テレビ局報道部の記者や有名出版社の編集者が全否定したことをオウムは実践していたのだ。
そこで感じた。常に現実を追い、隠れた真実を探すジャーナリストたちの想像を絶することが現実にはある。彼らは現実は知っているが想像力をなくしている。むしろ、現実を知らないクリエーターの方が現実を想像し得ることもある。自画自賛ではない。秘密兵器を開発する映画や漫画はたくさんある。僕だけではない。それをマスコミで働く人たちは想像できなかった。なかなか、興味ふかい。
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