森達也監督の「A2」凄かった。オウム事件当時の教団内を紹介? 見えてきたのはマスコミと住民の狂気? テレビでは絶対に放送できない作品 [映画感想]
森達也監督の「A2」凄かった。オウム事件当時の教団側内部を紹介? 見えてきたのはマスコミと住民の狂気? テレビでは絶対に放送できない作品
僕も映像業界で働く身なので、マスコミがいかに嘘を発信しているか?は分かっているつもりだったが、このドキュメンタリー映画を見て思い知った。1995年。僕もテレビにかじりつきオウム事件報道を見ていたが、マスコミが報道しないこんな現実があったことに衝撃を受ける。
前作「A」もそうだが、見ているとオウムの信者たちが気の毒に思えてくる。当時、そんなことを言おうものなら「お前はオウムの味方か!」「だったら入信しろ」「最低の奴らだ」と感情的に周りから攻撃されただろう。しかし、「A」で描かれたのは実行犯ではなく、彼らが逮捕された後。教団を維持することに奔走する村木広報部長ら。彼らは犯罪には関わっておらず、その計画さえ知らなかったのだ。
その構図は犯罪を起こした犯人の家族をバッシングするのと同じ。サリン事件は憎むべきものだが、事件を起こした団体に所属しているだけで、批判、バッシング、差別され、近隣の住民から出て行けと言われる。が、転出した先でも同じことが繰り返される。そして今回、描かれたのは、右翼団体の行動。最初はヤクザまがいな行動に驚かされるが、彼らは意外な発言をする。
「出て行け!では何も解決しない。解散することがオウム信者たちの最良の道だ」
ただ「出て行け」というだけの住民より理解できる。住民たちは「怖い」「危険」「だから、他へ行って欲しい」「出て行け」という自分たちのことをしか考えずに批判しているだけなのだ。だが、教団を監視していた住民グループが信者たちと仲良くなった地区もあることを映画は紹介する。最初は敵対していたが、次第に信者たちが危険な存在ではないことを理解したのだ。
しかし、その様子をマスコミは決して報道しない。トラブルが起こったときのみ、カメラを回しテレビに映し出す。「A」で描かれていたが、警察官が明らかなヤラセで信者を逮捕したり、警察、マスコミとは何なのか? 事件を起こした団体に属していれば何をしてもいいのか? イメージの悪い部分のみを報道。そうではない部分を隠してしまう。それが警察やマスコミのすることか?
この映画はオウムが悪くないと描いているのではない。マスコミや警察は本当に正しいのか? 素直に彼らを信じてはいけないのではないか? そして市民はそれらに乗せられ誘導されているのではないか?そんなことを語りかけてくる。渾身の力作。大塚のシネマハウスで明日17日まで森達也特集がつづく。
コメント 0