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監督業は俳優と距離を置くことが大事。親しくしてはいけない?その理由。 [my opinion]

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監督業は俳優と距離を置くことが大事。親しくしてはいけない?その理由。

もう、20年前ほどになるが、集まってきた俳優の卵たちのために無料のワークショップを月イチでやっていた。それ以外にも貧しい役者たちに飯を食わせたり、芝居にも連れて行った。決しても僕が経済的に余裕があった訳ではないが、招待券を頂くことが多かったので、有名な劇場での芝居は卵たちを連れて行った。いいものを見ることはとても大事。

僕が監督するときは小さな役でも起用した。役者のことをよく知らないと力を引き出すことができないと考えていた。どんな役者を目指しており、どんなことに興味があり、どんな思いで仕事をしているのか? 撮影現場は時間がない。小さな役の俳優とじっくり話す余裕がない。そんなとき、無名で若手でもやる気があることを知る俳優がいれば作品にもプラスだ。ところが、年月と共に卵たちとの距離感が狭まり、監督というより、理解ある兄ちゃん。オジさんと感じる卵たちも出てきた。ワークショップに遅刻する。欠席する。

「でも、監督はいい人だから分かってくれる」

注意しても彼らは親に注意されているような気持ちになっていた。僕が監督にするときは「俺は何かの役で出られるはず」と期待するようになった。応援しているからと全員を出す訳ではない。出演できない卵は拗ねたり、不満を言ったりした。

とにかくカメラの前に立て、ステージに上がって芝居をしろ!というのに「小さな仕事は嫌だ」「それは出来ない」と演技する機会を探そうとしない。そして自分から去って行った卵が「監督に切り捨てられた。酷い!」と言い触れ回る。それを鵜呑みにして離れて行く者もいた。友人の芸能マネージャーに言われた。

「俳優を育てるのは大変です。夢だ。プロだと言いながら彼ら彼女らは努力をしない。スポットライトを浴びた派手な世界にすぐ行けると勘違いしている。バイトがあるからオーディションには行けないという奴までいる。そうやってほとんどが潰れて行くんです。1000人いて1人がデビューできれば御の字。監督は監督です。僕らが育てた子たちを使っていい作品を作るのが仕事。俳優育成に時間や労力をかけるのは勿体無いですよ」

その通りだと思えた。その後、仕事でない限り俳優たちと会ったり、芝居に行ったりはしていない。距離を置くことの大切さを感じた。そうすることで、撮影現場では緊張感が持てる。親しければ「芝居でミスしたけど監督は許してくれる」と甘えてしまう。そう思わせてはいけない。だから「女優さんと飲みに行ったりするんでしょう?」とよく訊かれるが、それはない。監督業で大事なのは実は距離を置くこと。淋しい仕事なのだ。


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