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映画「新聞記者」に感じた疑問④ 思い込みで見に行き、思い込みで賞賛。観客が誘導される? [「新聞記者」検証]

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映画「新聞記者」に感じた疑問④ 思い込みで見に行き、思い込みで賞賛。観客が誘導される?

これまでのまとめを書く。この映画のヒロインは望月衣塑子さんではない。劇中に登場する政権も安倍政権と似た部分はあるが、モデルにしているわけではない。物語は完全にフィクション。新聞記者や新聞社のあり方を徹底取材したものではなく、作家が想像で書いたものである。それは作品を否定することではなく、同じような映画はたくさんあり、エンタテイメントとして楽しまれている。

言ってみればこの映画は昭和40年代に流行った「事件記者」もの。僕もよく見ていた「特捜記者」もそうだが、記者が政界の腐敗ネタを掴み記事にしようとするが、横槍が入ると言う王道の現代版。今風にするためにネット工作のエピソードや伊藤詩織さんを思わせる事件を取り入れるが、それほど深くは切り込まない。それを多くの人は「望月さんをモデルにした女性記者が安倍政権を斬る映画」だと勘違いしたと言うのが真相。というところまで書いた。

つまり、この映画は娯楽映画なのだ。ではなぜ、望月さんがモデルでもなく、著書からエピソードを借りるわけでもないのに「原案」とクレジットしたのか? 彼女や前川さんまで特別出演させたか? そしてヤバイ話でもないのに、「ネットで攻撃を受けた」と関係者が発言したり、雑誌が「有名女優が出演拒否したので、韓国の女優を起用した」と記事にしたりしたのか? そのために観客にこう思ったのだ。

「望月さんがモデル。安倍政権に斬り込む。かなりヤバイ物語なので有名女優は出演拒否。韓国から呼ぶしかなかった。ネットで攻撃もされるし、伊藤詩織さん事件も描かれている。望月さんや前川さん本人が出ているし、かなり本格的な社会派だろう」

でも、そうではなかった。一般的な娯楽作品。政治や新聞についてもさほど取材せずに、想像で書かれた脚本だった。誤解したのは観客の勝手だ。制作サイドは単なる娯楽作を作ろうとした? そうだろうか? だったらなぜ、フィクションである娯楽作品に望月さんや前川さんを出演させたか? そんな形を取ることはあまりない。また「原案」と言いながら、何の引用もしない望月さんの本。

これらから言えるのは作り手も「リアルな政治ドラマ」と誤解してもらおうという意図があったのではないか? もっと、うがった見方をすれば、「これはタブーを超えた安倍政権批判」と話題にさせたい。ただ、映画がヒットして急に官邸から電話が来て「反政府映画だ!」と言われると困る。だから、物語には安倍も菅も登場しない。伊藤詩織さんの事件も詳しく説明しないし、追求もしない。批判されたら「いえいえ、これは安倍政権がモデルではありません」と言う。実際、架空の政権を架空の記者が追う物語なのだ。

でも、観客には誤解してほしい。その意味で「特別出演」「原案」そして「主演女優拒否情報」「韓国から女優を呼ぶ」「ネットで攻撃もされている」さらには「参議院選前に公開」という演出をしたのではないか? いけないことではない。映画はその手のあざといくらいの宣伝をするもの。

その思惑は当たり。大ヒットした。僕を含め多くが思い込みで、期待して映画を見た。が、思っていた物語ではなく失望。何ら安倍政権に斬り込んだ映画ではない。内容は昭和40年代の記者ものだ。十分な取材もせずに、書かれた脚本。ただ、一部はそれに気づかず「安倍政権に斬り込んでいる。今、日本人が見るべき映画!」「よくここまで描いた!」と評価するが、どこにも斬り込んではいない。何ら闇の解明もしていない。作り手は安全地帯にいる。非常に今日的な映画なのだ。(次回完結)


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