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業界はフットワークが軽くないとダメ。でも、拘わってしまうのだ! [映画業界物語]

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業界はフットワークが軽くないとダメ。でも、拘わってしまうのだ!

映像業をしている人。特にディレクターと呼ばれる人。例えば沖縄戦の番組を作るとなると、こんな行動をする。まず、本屋に行き「沖縄戦」関係の本を探し、2−3冊購入。(今ならネットで検索して詳しいHPを見つける)それらの本を斜め読み、良さそうな1冊をベースに番組を構成する。あとは現地取材。そして沖縄戦に詳しい先生を見つけ監修。それで番組を作ってしまう。

僕が「青い青い空」と言う書道映画を作った時。書道ブームで何本もの書道ドラマが作られた。そんな1本。脚本家は書道のことをほとんど勉強せず、スポーツドラマの公式でシナリオを書いた。。本来なら書道の魅力を織り込んで物語を作るべき。だが、映画を見ても書道の知識をうまくすり、ストーリーが展開する抜けて展開していた。

ドラマとしては成立しているが、これでは書道を題材にする意味はない。先のテレビディレクターといい、その脚本家といい、やっつけ仕事だ。しかし、業界でやっていくにはそれが必要なのである。真剣に題材を勉強していたら最低1年はかかる。それに見合うだけの給料やギャラはもらえない。仕事は次々にやってくる。

だから、その手の本1冊で済ませる。題材をほとんど勉強せずにシナリオを書く。だが、沖縄戦なら記録映像。書道なら筆を持ち書を書く生徒が写っていれば、題材に詳しくない観客や視聴者はそれなりに納得してしまうことが多い。適当なものでも「へーそうなんだ」と思ってしまう。

書道の映画でいえば、その作品。企画スタートから撮影まで3ヶ月。多分、シナリオは1ヶ月。調べたり学んだりしている時間はない。執筆だけで1ヶ月は必要。でも、ドラマとして面白い必要はある。だから、スポーツドラマのパターンを持ち込み。書道関係者に話だけ聞いて、書道を勉強しなくても書ける物語を作ったのである。

「酷いなあ〜」

と思う人もいるだろうが、テレビ映画の世界はそんな仕事をする人が多い。ただ、今***がブームと呼ばれてから勉強したのでは遅い。素早く、適当に仕上げることが業界的は大事。ただ、中身はないし、ブームが去れば誰も見ない。思い出すこともない。

僕がライターをしていた頃。雑誌に記事を書いていた。脚本家デビューする前。その時、編集者に言われた。

「太田くんは拘りすぎる。ライターはフットワークが軽くないとダメ。W杯があればサッカー。恐竜映画が公開されれば恐竜。と、身軽に動けないと読者の興味はすぐに次に行く。1つに拘り時間をかけていると、時代が変わってしまうよ」

その通りなのだ。そんなことで僕はフットワークが軽くないことを自覚。映画監督になってからは本当に自分が興味を持ったことだけをすることにした。書道は3年以上勉強。原発も徹底して取材した。今回の沖縄戦も2年かけて勉強、取材。

それだけではダメと思えて太平洋戦争、日中戦争も勉強。過去だけでなく現代も知らないといけない!と思え、日米地位協定、基地問題、日米合同委員会、トランプ大統領についても勉強した。それらは今回の作品には持ち込めない。が、それを知っていて作るのと知らずに作るのでは、まるで違うものになるのだ。

ただ、そこまですると、かけた年月に相応しいギャラにはならない。もともと監督料は安い。時間をかけるほどに日給、時間給は下がって行く。皆、それが嫌で、ほどほどにして本1冊で、別のジャンルの方法論を持ち込んで対応してしまう。そして悲しいことに、多くの観客はその違いに気づかない。

とは言え、見る目のある人には伝わる。感動のクオリティが違う。そしてブームが去っても、数年して見ても、時間をかけて作ったものの感動は変わらない。

と言うと、物凄いこだわりで仕事をしているようだが、僕の場合。フットワークが軽くないと言うことがある。今日はサッカー。明日は恐竜。と言うことができない。こだわると、その題材に2年でも3年でも執着する。と言うか執念深い。

山崎豊子さんの小説は大好き。その執着の権化のような作家だ。「白い巨塔」「二つの祖国」「沈まぬ太陽」「華麗なる一族」と徹底した取材で書いている。黒澤明監督の映画が時代を超えて愛されるのも同じ理由だろう。

そんなことで毎回、入れ込んでやるので生活が大変。過労で毎回倒れる。でも、だから、観客が感動してくれる作品ができるのだと思える。「沖縄戦」もそんな作品にしたい。



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