原発事故を描いた映画「朝日のあたる家」ー感想「リアリティのない映画だーという人?」 [【再掲載】]
こんな感想をくれた人がいる。
「物語は福島のあとの原発事故なのに、人々の反応が福島のときと同じ。2度目なのだからもっと敏感になり、もっと恐怖を感じ。慌てふためくはず。リアリティがなく、見ていられない!」
年配の方がくれた感想だ。この方は原発問題に詳しく、反原発を掲げている。福島の事故以降に勉強し、危機感を持ったのだろう。「次、事故が起きたら大変だ!俺はそう思うのに、映画の中の人たちはあまりにも警戒心がない。福島のときと同じ反応。おかしい!あり得ない!」と思ったのだ。
しかし、もし、2度目の原発事故が起きたなら、
映画の中の登場人物こそがまさにリアルな反応となるだろう。というのも、僕は「朝日」の宣伝キャンペーンで日本中を飛びまわっている。その先々でお会いした方々。もうビックリするほど原発事故について関心がない。
一部ではない、ほとんどの方といっていいほど「もう収束したんでしょう?」「避難は解除になったよね」という。それどころか「関心ない」「関係ない」「それより景気が大事!」という方が圧倒的。福島から離れるほどに、そんな方が多かった。
もっと驚いたのが反原発を掲げている人たちなのに「朝日」を見て「ここまで酷いと思わなかった」「知らないことが多かった」と言う人が結構いたこと。「朝日」で描いたエピソードはスクープした事実ではなく、新聞やテレビですでに紹介されたものばかり。原発事故に関心があるのに、それすらも知らない人が多くいたということ。
そしてあれほどテレビ、新聞ではウソが平然と流されたのに、
今もそれらマスコミを信じる人がとても多い。(もちろん、事実を伝える社もあるが、相変わらず提灯持ちも多数)思い出してほしい「汚染水はコントロールされている」と首相が世界に発言しても、それを信じないのは国民の60%に過ぎない。あとの40%は信用しているということ。乱暴に計算しても4000万人は信じているのだ。
この現状から分わかること。もし、2度目の原発事故が起こってもテレビではすぐに事実を伝えず。福島と同じように「メルトダウンはしてない」と報道。避難が遅れ。市民も「大丈夫だろう。テレビで言ってないから」と安心。福島と同じ展開となる可能性は大なのだ。先の大雪でも総理は天ぷらを食い。都知事は”問題ない”と発言するほど危機管理ができてない。
山梨が雪で閉ざされても、NHKはオリンピック中継を止めない。また、ロケ地の湖西市近辺で取材したときも、多くの人が「ここは浜岡原発から60キロ離れているから大丈夫」と言い切っていた。飯舘村=>福島第一原発も60キロと伝えると、初めて「へーーー」というが、やはりリアリティがないようだ。
柏崎刈羽原発から30キロ圏内の方とお話したときも
「原発の近所に住んでいる人。ほんと大変よね? 可哀想だわ〜」
とまるで他人事のように話すおばさんの言葉が印象的だった。自分が被害に遭うかも?という認識がまるでない。でも、それが多数の市民の感覚なのだ。
先の反原発の年配の方。しっかりと原発問題を勉強されているが、自分が「危険」と思ったら=日本中の人が同じふうに感じる、と思い込んでいる。実際は僕が日本各地で見聞きした意見に現れている。「原発事故は終わった」「危険なのは福島や原発の近隣だけ」「私たちには直接関係ない」と思っている人が大多数なのである。映画を批判する前にまず、まわりの人たちの「思い」を訊いてみるべきだろう。
つまり、次の原発事故が起こったら「朝日のあたる家」と同じ展開になる可能性が高い。もし、違う展開があるとすれば、福島以上の規模の事故となり。逃げる間もなく多くの人が、今度こそ大量の死亡者が出て、どこかの政治家が「原発事故で死亡者は出てない」とはもう言えない事態になること。
そのときはもう、日本という国自体が終わるときか?
国土の多くが汚染され、やはり日本という国が終わる始まりとなるか?どちらかだと思える。
まるでSF映画。でも、それが現実。驚くほど多くの人が福島の現実を把握しておらず。「収束した!」と思い込んでいる。だからこそ「朝日のあたる家」を見てもらいたいのだ。そこに描かれているのは、あなたの町で明日起こる現実だと伝えたいから。
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2021-04-10 22:19
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