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感想「魂を揺さぶられる映画、他の人たちにも体験してほしい」 [「朝日のあたる家」観客の感想]

 
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 沼津で「朝日のあたる家」を見てくれた男性の感想

 心に染みる素敵な文章なので、ご紹介する。

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若いころ、東北の小さな町の映画館で映写機を回すアルバイトをしていた時期がある。フィルムがカタカタと鳴る部屋の窓から、いくつもの映画のエンディングと、お客さん達の後ろ姿を眺めてきた。
僕のシフトは夜だったので、まばらな劇場の中には時折 無防備にすすり泣く大人の姿を見かけることもあった。そんな時にはいつも、この人は「束の間のフィクションの中からいったい何を持ち帰ったのだろう…」と想像をした。

今日観た太田隆文監督の『朝日のあたる家』は不思議な映画だ。
物語の舞台はいつか分からない今であり、福島で起こった過去であり、近い将来自分に起こる未来でもある。(何もしなければ必ず来る未来)

僕ははじめ、失礼ながら交通安全教習の暗いドラマでも見に行くような気持ちが、心のどこかにあったかも知れない。山本太郎さんが出ている原発の映画、という認識。
ところが映画が始まってから終わるまで、近年ないほどにストーリーに没頭させられることになった。

ひとつの家族を描いたフィクションなのだけれど、次々と押し寄せる出来事には創作がなく、僕たちは福島に実際に起こったのと同じ出来事を、主人公達の戸惑いと共に追体験していく。

見慣れた静岡の景色のせいなのか、日頃から原発に苛立っていたせいもあるのか、スクリーンの中と外の世界がどうしようもなく地続きに繋がっているように思えて、いくつかのシーンで感情が抑えられなかった。そして何度も意識が物語を離れ、茨城で暮らしている実の両親や川崎にいる妹夫婦の顔が浮かんだ。

僕はあの震災を福島で過ごさなかったけれど、今日の映画のおかげで少し体験することが出来たと思う。劇中の見所の方はネタバレになるので伏せるが、エンドロールに流れる協賛者たちの勇気にも胸を突かれた。おそらくは僕らと同じ素朴な町の人々、会社や店が名を連ねている。

この映画は上映してくれる劇場探しに苦労をしているというが、日本が経験してしまった悲劇をこれ以上ない形で伝えてくれている。100年後は間違いなく世界中で評価される映画だ。

しかし僕たちは、人の目に触れるのが100年後では意味が無い映画だという事も知っている。今日僕が魂を揺さぶられたのと同じことを、まだ見ていない他の人たちにも体験してもらいたい。ひとりでも多くの人にこの映画を観てもらうこと。それがこの作品と出会った者の務めだと思った。

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