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「朝日のあたる家」完成披露上映会レポート(1) [完成披露上映会]

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 By 永田よしのり(映画評論家)

「朝日のあたる家」静岡県湖西市にて披露上映会/その1


 6月29日土曜日と6月30日日曜日、静岡県湖西市にて、太田隆文監督の最新作で、湖西市民支援により出来上がった「朝日のあたる家」の、日本での初上映、披露上映会が開催された。

 僕も昨年の7月、監督から脚本を読ませていただいて以来この映画の製作現場に立ち会ってきた(脚本を初めて読んでから、キャスティング、撮影、0号試写、パンフレット原稿まで)。自身もアテレコで参加させていただいたりもした。

 映画の成り立ちの最初から最後までに付き合うことはほぼ初めて。僕はほとんどの場合が撮影現場に初めておじゃまして、その後インタビューやら現場ルポやらを書くことが多い。

 そういう意味では、映画が一般に上映されるという最後の瞬間(実は映画はそこからが出発でもあるのだが)に立ち会わないわけにはいかない。これでそこに居なければ今までの過程を見届けてきたことに収まりがつかない。

 6月29日土曜日、早朝5時半に自宅を車で出発。

 僕の担当編集者を途中でピックアップして、2人で湖西市に向けて車を走らせる。

 さすが土曜日の早朝、東名高速道路はどこも渋滞に引っ掛からず、スムーズに上映が行われる湖西市民会館に到着したのが、午前11時半頃。

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 撮影現場で知り合った映画ボランティアスタッフに連絡して、入場チケットを受け取り、開始前の慌ただしい中、太田監督とも顔を合わせ、僕らは上映を待つことに。

 この日は1日2回、午後1時と午後7時の上映が予定、その前後に参加した市民俳優らや、監督、出演俳優らの舞台挨拶も。

 入場した観客らは、陳列された映画で使われた小道具や、販売されているパンフレットやシナリオを手に取る。サインが入っているものもあり、シナリオはこの日でほぼ完売、パンフレットも好調な売れ行きのようだった(手前みそだが、パンフレットのほとんどを僕が原稿執筆。その文字数は約30000文字)。

 この日1回目の上映、午後1時前には場内は満席。1回目の上映に入れない人たちのために、急遽予定になかった午後4時過ぎからの上映がアナウンスされた。それでも一刻も早く映画を観たい気持ちからか、100人ほどの人が立ち見で劇場に残っていた。

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 少し残念だったのは、やはり宣伝やイヴェントのプロが最前線で仕切っていないこと。続々と入場して来る観客の多さに対応仕切れずに少なからずパニック状態に陥っていた。早めに現状に対応して入場制限をかけるなりすれば良かったのだが(差し出がましいとは思ったが、僕は早めに対応するようにスタッフに進言したのだが)、

 その対応が遅れたために憤慨した観客も多少はいたようだ。それでも急遽の追加上映を決めてアナウンスしたことは迅速的確な対応と言えるだろう。都内でスケジュールがガチガチに決まっている劇場では、そうした対応はまず出来ない。入れない観客は次回以降に回されるのは常であることを考えると、そうした対応ができたのは地方市民会館だからこそのユーティリティーだったと思う。

 市民俳優と監督との挨拶が終わって、いよいよ本編の上映。

 僕は0号試写を観ているが、音楽も入り、全てが完成した形で観るのは今回が初めて。音楽が入ることによって、役者たちの演技や情景描写などの演出・編集に更なる効果が加わることは言うまでもない。そこに太田監督の使うカットバック演出が様々な意味を持つ。

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 カットバックとは、映画の中での時間軸、場所をいくつかの組み合わせによって見せて行くこと。たとえば同じ場所、時間で描いて見せること。違う場所、時間で描く。同じ場所、違う時間で見せる。違う場所、同じ時間で見せるという4つが大きく分けるとある。

 その時間軸と場所の組み合わせで、観客はそこで何が起きているのか、他の場所では何が起きているのか、を理解し、想像していくことになる。

 映画は冒頭では、主人公となる平田家のごく他愛もない日常の風景を描写。このあたりでは観客は平田家の日常を共感しながら微笑ましく受け止めていく。それは地元で撮影された映画だからか、普段あまり映画を劇場などで観ないからか、「ああ、あそこは~の場所だね」とか、「可愛い娘だねえ」などと、自分の家のお茶の間のように感想を言いあっていることからも分かる。そうして映画を楽しんでいることが微笑ましくさえある。

 僕は映画館でのマナーなどをよく書くが、こうした地方での上映ではけしてじっと黙って映画を観なくても良いと思っている。もちろん常軌を逸した言動は困るのだが、地方では昔の映画を観に来ていた観客の風景があるような気がするのだ。入場前に長い列を作って並んでいる人たちの顔を見ていると、色々な期待でわくわくしているような顔があちこちにあった。

 それは〃映画だけが娯楽だった時代〃の風景のような。

 そんな気もするのだ。

 映画では地震が起き、原子力発電所に事故が起きてから日常は少しづつ崩壊していくことになる。その様子を観客は固唾を呑むように見守っていく。

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 終わりに近づくにつれ、周辺ではすすり泣く声が聞こえ始める。その頃には口を開く者など誰もいない。ただただ画面の中で起きていくことを集中して受け止めているのだろう。

 上映が終了。エンドクレジットには協力した湖西市民たちの名前が列記されていく。その数は100人や200人ではないために、延々と続いていくようだ。自分の名前を確認しに来た人もいるに違いない。そして監督・太田隆文の名前が消えた後、少しづつ拍手が起こり始め、それがしばらく続いた。

 少し時間を置いてから、監督と出演者陣(この日は平田家の家族、並樹史朗、平沢いずみ、橋本わかなの3人が登壇/残念なことに母親役の斉藤とも子は別の予定がずいぶん前から決まっていたためにこの日は不参加だった)の舞台挨拶が行われた。

 並樹さんは映画の中でのアドリブよろしく、お茶目な様子で観客を笑わせ、そこに監督がツッコミを入れ、平沢いずみと橋本わかなは映画の中の関係性そのままの姉妹の感じで観客への感謝を伝えた。

 舞台挨拶が終わり、控室へ顔を出す。

 扉を開けるとちょうど平沢いずみが立っていて、僕に声をかけてくれた。

 「あー、永田さん、お久しぶりです!」

 僕は彼女の着ていたブルーのワンピースを「今日の服、可愛いね」と言うと「いやー、そうですかあ!」と笑っていた。彼女のナチュラルな笑顔はとても可愛らしいと思う。

 まだ夜の回にも舞台挨拶があり、忙しそうに行動しているスタッフらに一言挨拶を済ませ、また夜の回の舞台挨拶までに戻って来ることを約束して、とりあえず僕らは市民会館を一度後にする。

 午後4時少し前。

 まだ2時間半ほどの時間を利用して、浜松市西区にある中華そばと餃子で地元民に愛されているという「浅草軒分店」に。

 夕方だというのにひっきりなしにお客が来る店で、僕と担当編集者のSは、中華そばの大盛と餃子を堪能した。

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 浜名湖の堤防で食後に缶コーヒーを飲みながら海風にあたる至福の時間を少し過ごし、再び午後6時少し過ぎに湖西市民会館に戻る。すると会場前に早くも300人以上の、会場を待つ人達の列が。

 「これは夜も満席になるだろうな」

 そう思いながら、僕らは再び市民会館の中に入ったのだった。(以下/その2へ続く)

 転載元=> http://ameblo.jp/blues-yoshi/entry-11563739512.html

 (ご本人の承諾を得て転載)

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